第33話 サモンと姉
サモンと姉
「アラちゃん、おはよ~。」
全員が落ちた後、俺の部屋にはまたしてもバニー姿の姉貴が居る。
せっかくの美人バニーも、中身が姉貴だと思うと、何ともな~。
「今晩は、姉貴。今出勤? ご苦労様。」
「ん~、出勤というか、ここで寝起きね。それより、夕方の話、聞いたわよ~。記録も見せて貰ったわ~。」
「ぐは! 弟が玉砕したのがそんなに楽しいか?!」
「それはどうかしら? それより、泉希ちゃん、どうするつもり?」
「泉希? あ、ローズのことか。それは彼女次第では? 俺に言わせれば、こんな幽霊の何処がいいのかと思うのだが。でも、彼女の気持ちは素直に嬉しいし、俺もゼロから彼女を見ようと思う。だが、5歳年下だろ? 彼女がおっさん好みだとは思わなかったよ。」
「ん~、それもどうかしら? 彼女は多分、年齢なんか気にしていないわ。下手したら性別すらもね。まあ、アラちゃんにあんな甲斐性があったとは驚きだけど。」
姉貴はそう言いながら、モニターをつける。
モニターには、俺の抜け落ちていたと思われる記憶の一覧が表示される。
流石だな。今日のイベントでの源氏関連の奴もリストアップされていた。
「それで、何か分かったのか?」
「今の所はあれから進展はないわね。クリスさんの言っていた人には連絡がついたのだけど、期待外れね。彼はプログラムにチート処理をしていたみたいで、こちらがチート防止機能をアップしてからは、ログインしなくなったそうなの。」
「う~ん、それは残念だな~。とにかく、NGMLも本気のようだし、情報ギルドも頑張ってくれている。俺は待つしかないみたいだ。」
「そうね。だから、こっちからも積極的に行くわよ! イベントをする事になったわ!」
「え? イベント? メイガス見つけたら報酬とかだと、自称メイガスがわんさか出るぞ? それに、変な疑いをかけられるだろ?」
「そんな事しないわよ~。PVPの大会よ!」
ふむ、それはいいかもしれない。
メイガスなら、対人は得意なはずだ。自信がある奴ならエントリーしてくるだろう。
なるほど。そこを見張っていれば、見つかるかもしれない!
「うん、いい案だ! で、具体的には?」
姉貴がルールを説明してくれる。
既に告知していて、予選は火曜日から土曜日。
プレーヤーが希望した時間帯から、一致した者同士、ランダムに組み合わせて試合が行われ、日曜に決勝が行われるそうだ。少々強引な日程だが、こちらは急いでいるので、これは仕方なかろう。日曜まで俺が生きている保証も無いしな。
そして、個人戦と6人でのパーティー戦、両方同時に開催。これは、少しでも網を広げる為だ。
更に、レベル10毎にクラス分けされ、装備も運営側が指定した物しか使えない。
ふむ、これなら公平ではなかろうか?
「なるほど、いいと思う。要は予選でのログが取れればいい訳だし。」
「ところでアラちゃん、あの、死んだ時の事、覚えている?」
「いや、いつ死んだかすら分からない。クエストが終わってから呼び出されて、初めて知ったから。」
「こっちでは正確な時刻を特定しているわ。あのクエスト中ね。膨大な情報が一気に流れた時間が10秒弱あって、その直後よ!」
「え! そこまで分かっているなら、かなりの進展じゃないか! うん、確かカオリンに、ぼさっとするなと怒られたな。多分あの時だ!」
「でも、それが分っても、何故それが起こったのかがさっぱりなのよ。だから進展とは呼べないわ~。アラちゃんが覚えていないなら尚更ね。単に正確な時間と、アラちゃんの記憶がその時にPCに入ったって分かっただけね。」
「う~ん、まだまだか~。でも、今はそのメイガスとやらに賭けるしかなさそうだな。うん、大会の方、頼むよ。」
「ええ、まかせ…、あ! ヤバ!」
いきなり姉貴が消えた!
振り返ると、何とサモンが立っている!
「あ、サ、サモンさん、お帰り。うん、今日はサモンさんのおかげで皆、大喜びだ。」
俺は努めて平静を装う。
流石に案内バニーがこの部屋に居たのは不味すぎるだろ!
「い、いや、それはええねんけど、今、バニーちゃん、おらへんかった?」
「そうか? 多分、気のせいでは?」
「い~や! わいは見たで! しかも、シンさんに喋っとった! 自分から喋るバニーちゃん! こ、これは……。」
「ん? これは?」
「も、萌える! シンさん、今の人、紹介してくれ!」
ぐは! そっちかい!
どうやら完全に見られたようだ。
そして、下手に誤魔化しても、こいつには通用しそうも無い。
「何とも言えないが、運が良ければまた会えるかもしれないな。」
「まあ見当はつくわ。管理サイドやろな。で、本題や。シンさん、PVPの大会、出えへんか? シンさんやったら優勝間違い無しや!」
流石はサモン、情報が早いな。
「う~ん、自分で意識した事はないのだけど、皆の反応と、この前のアホとの試合で、ある程度は自分が特殊だと認識したよ。なんで、俺が出たら反則だな。」
そう、これは俺以外のメイガスを探す為のイベント。俺が出ても無意味だ。
「あちゃ~、やっぱそうやわな~。シンさんからしたら、勝って当たり前か。それに目立つだけやしな~。」
「うん、済まない。だけど、サモンさん達がカオリン達と組めばいい線行くんじゃないか? パーティー戦なら、平均レベルでクラス分けされるから、カオリンとタカピさんなら、平均レベルを落としてくれるだろ。」
「な~るほど。それはおもろそうやな。せやけど、それやと一人足りへんな。うちのギルドは殆どレベル99やしな~。」
「ふむ、さっきのバニーとかなら頼めるかもしれないな。奴ならまだレベル1だ。」
「え! シンさん! それほんまでっか? そ、それは大歓迎やわ! お、おおきに!」
「まあ、あの姿で来るとは思えないけど、聞いておくよ。」
うん、どうせサモンにはばれてる。姉貴もここで寝泊まりしているならいい暇潰しだろ。
「ふんふん。それくらいならいいわよ。日中以外なら大丈夫ね。でも、私、初心者よ? それでもいいならだけど。」
ぶは!
「バ、バニーちゃん!」
再び出現した、案内バニーにサモンが特攻する!
おい、サモン! ここでこいつのレベルを上げてどうする?
しかし、俺の予想に反して、サモンは消えなかった。
代りに、床で頭を押さえてのたうっている!
「ふんふん。痛覚システムの試験は上々っと。」
「そ、そうか。しかし本当にいいのか? 俺は半分冗談だったのだけど?」
「あら、愚弟がお世話になっているのよ? 少しくらいは協力するわよ~。」
「わ、分かった。でも、流石にそのアバはダメでは?」
「そうね~。IDとかも適当に見繕っておくわ。」
案内バニーは消えた。
サモンもようやく解放されたようで、ソファーでぐったりしている。
「という事らしいんだけど。サモンさんもあれでいいのか? その、色々と迷惑かけまくりそうで、俺としては非常に心配なのだけど?」
「わ、わいも男や! 男に二言は無い! ほんで、シンさんのお姉様やったんか! 何とのう理解できるわ。」
う~ん、何を理解したのかは分らんが、どうやらあれでもいいようだ。
まあ、実質只の人数合わせだから、問題はなかろう。
多分。
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