第30話 次のクエストに向けて
次のクエストに向けて
俺がぐったりと気落ちしていると、タカピさんが来た。
「今晩は。シン君、ローズ君。おや? 皆はまだなんですか?」
「タカピさん、今晩はっす!」
「タカピさん、今晩は。すみません。多分、カオリンはもうここには来ません。」
「え! 一体何があったんですか?! 君達はあんなに仲が良かったじゃないですか?!」
「い、いえ。俺がカオリンに告白して、振られたんです。そういった理由で、彼女も、ここには来づらいでしょう。」
すると、ローズも何故か謝る。
「本当にごめんなさい! 元はと言えば、全て、私の我儘がいけないんです!」
「いや、ローズは悪くないだろう? むしろ君は被害者だ。こんな俺に巻き込まれたな!」
「シン君! ローズ君! 誰が悪いかなんて、そんな事はどうでもいい! すぐに探しなさい!」
「「は、はい!」」
しかし、思った通り、カオリンは落ちていた。
俺が、タカピさんに、どう説明しようかと悩んでいると、何と、カオリンが帰って来た!
「お、お帰り。カオリン。そ、その…いいのか?」
「カオリン、お帰りなさいっす。でも、あたいはカオリンに謝らないっすよ!」
「カオリン、今晩は。うん、何があったかは僕も聞かないです。でも、戻って来てくれて本当に良かった。」
「タカピさん、今晩は。シン、さっきは取り乱してごめんなさい。あたしはもう平気よ。これからも今まで通り、シン達と一緒に狩りに行くわ。そして、ローズちゃんはそれでいいのよ。貴女も悪くない。だから! お願いね!」
「はいっす!」
ん? カオリンはローズに何をお願いしたのだろう?
しかし、ローズはちゃんと返事をしている。
う~ん、訳が分からん。
「うん、カオリンがいいなら、俺も嬉しい。じゃあ、今まで通りだ。皆もそれでいいよな?」
「はいっす!」
「ええ! それで、今日は何処に行くの?」
「うんうん、それでいいですね。ところで、シン君。あの『フォーリーブス』って子はどうなりました?」
流石はタカピさんだ。上手く話題を変えてくれた。
「あ、忘れていました。あいつからは、ローズと一緒にアイテムは回収しました。はい、これです。」
俺は、テーブルに『草薙の剣』を2本取り出す。
「これは、カオリンとタカピさんに持って欲しい。サモンさんもそのつもりだったようだし。まだ一本あるけど、後衛の俺には必要無かったかもな。」
「おお~! これはいいですね~! 武術系スキルのリキャストタイム半減ですか! 前衛の僕達には、まさに宝ですね!」
「え? シン! ありがとう! ええ、これは凄い効果ね!」
二人は早速装備して、確認している。
俺としては、若干後ろめたいが、喜んで貰えて何よりだ。
カオリンも完全にいつも通りに戻っている。
うん、ローズも嬉しそうだ。
「それで、シン、あいつ、どうやって捕まえたの? 落ちられたら手出しできないはずだけど?」
「あ~、それはカオリン・・・」
俺とローズが説明すると、二人は納得してくれたようだ。
そこに、サモンとクリスさんが入って来た。
「今晩は~。お、ええタイミングやったな。皆、揃とるようや。」
「皆さん、今晩はですわ。」
サモンとクリスさんは、カオリンとタカピさんの腰のアクセサリーを見て、頷いている。
「まあ、けったくそ悪い事になってしもたけど、結果オーライや! それで、シンさん、今日はどないする? わいとしては、装備も揃ったことやし、早速、皆で挑戦してみたいねんけど?」
「そうだな、サモンさん。前回、皆、異存なかったようだし、俺も行ってみたい。なので、詳しく説明してくれるとありがたい。」
「せやな。ほな。」
サモンが説明しようとすると、ギルドルームのインターフォンが鳴った。
「誰かしら? シン、入会はもう打ち切っているのよね?」
「うん、もう募集はしていない。バットマンさんかな? だけど、彼なら俺に直接コールしてきそうなものだけど?」
カオリンが立ち上がって、インターフォンを取り、応対してくれる。
「ラッキークローバーって人だけど、噂を聞いて、どうしても入会させて欲しいって。シン、どうする?」
「「「「ぶはっ!」」」」
タカピさんと、カオリン以外の全員が一斉に吹いた!
「て、丁重にお断りしてくれ。」
「そう、分かったわ。」
何やら、カオリンは断るのに苦労していたようだが、何とか撃退できたようだ。
しかし、あいつ、一体どういう神経しているんだ?
「あ~、ラッキークローバーってのは、あの、フォーリーブスの新IDだ。言っていなかったな。済まない。」
「目的は分かるっす! 大方、ここに入って、情報だけ盗むつもりっす! だけど、ID確認しておいて良かったっす!」
「だろうな~。サモンさんとこは大丈夫だったか?」
「流石にうちに来る度胸は無いやろし、入会条件も無理やろ。他の仲のええギルドの奴には、それとのう、聞いとくわ。」
「その方がいいだろうな。」
しかし、あいつ、そのうちまたID変えそうだな。
これでフォーリーブスの件も完全に片付いたので、やっとサモンの話だ。
「っちゅう訳で、先ずはその下拵えや。具体的には、カオリンちゃんとタカピさんの特訓やな。」
「え~! また特訓なの?」
カオリンが愚痴をこぼすが、これは仕方なかろう。
俺もだが、現在、全員のレベルの差がありすぎる。
これでは連携に支障をきたすのは明白だ。
「まあ、最後まで聞いてや。そら、只のパワーレベリングじゃつまらんやろ。わいもおもろない。それでや、そこそこの推奨レベルで、まだコンプリートされて無いとこに行きたいねん。」
「なるほど! それはいいですね~。僕もわくわくしてきましたよ。」
「うん! 俺もやってみたい!」
「シンさんが居れば、できそうっす!」
「ええ、それならいいわ! あたしもやってみたいわ!」
「それでサモンちゃん、何処に行きますの?」
俺達はサモンの提案の元、『奥州』に飛ぶ。
目的は、『衣川館襲撃』イベントだ。
俺は例によって記憶が抜けていて、何の事だか分からなかったのだが、道中、カオリンとタカピさんが教えてくれる。どうやら、歴史上の、源氏の内紛イベントのようだ。
ふむ、俺の記憶の抜け落ちに関して、タカピさんには既にNGMLから知らされていると見ていいだろう。
推奨レベルは80だが、今の俺達には苦にならない。
途中、出現する敵には、ローズが挑発し、耐えてくれている間に、後衛、俺とサモン、そして、クリスさんの魔法で前衛を強化、回復する。後は、カオリンとタカピさんが無双するという、一つの黄金パターンが出来上がった。
本来ならば、サモンとクリスさんの範囲魔法を連続で唱えれば瞬殺なのだが、それでは特訓にならないので、専ら止めは二人に任せる。
「いや~、気持ちいいですね~! なんか自分が強くなった気がしますよ!」
「そうね! シンとクリスさんのバフのタイミングが最高だわ! なんか、痒いところに手が届くみたいな。後、サモン! あれはわざとでしょ!」
「あちゃ~、ばれとったか。せや、わいから見て無茶な攻撃、避けられそうな攻撃に関しては支援せえへんで。タカピさんもやけど、そういう練習も頼むわ。」
「そうっす! カオリンは図に乗り過ぎっす! 周りが見えていないっす! その点、タカピさんは安心っすね。」
うん、それは俺も気付いていた。
俺がカオリンに、『ダメージキャンセル』や、『ダブルアタック』を唱えてやろうとすると、たまに横からサモンが制するのだ。
ただ、カオリンの、スキルを使わない連続攻撃に関してだけは凄まじいの一言だ!
あれは、以前から凄いとは思っていたが、見ていて惚れ惚れする。そしてサモンも驚いていた。以前見たローズのコンボより上かもしれない。
もっとも、そのおかげで全く周りが見えなくなっているようだが。
「おっしゃ、雑魚はここまでや! こっからが本番やで~!」
俺達の進路に、巨大な扉が出現した!
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