第18話 パワーレベリング
パワーレベリング
俺達は現在、階段に鮨詰め状態の鬼共を前にして、準備中だ。
途中、最初のトラップのあるIQテストみたいなところは、カオリンが一発で解いて楽勝。
もっとも、サモンが早とちりして、間違った階段を踏もうとしたところを、クリスさんにうさ耳を掴まれるというハプニングはあったが。
また、次の、矢を放っている鬼も問題無かった。
俺が『パワーブースト』をサモンとローズにかけ、彼等は最低限の武術系スキルを使い、一体ずつ、一撃で屠って行く。
思った通り、ここは一撃で仕留めて行けば良かったようだ。
「問題はこっからやってんけど、シンさんのアクセサリーのおかげで、ここはもう楽勝や。ほな、クリス頼むわ。」
「ええ、じゃあ、行きますわ! 絶対零度! 絶対零度! 絶対零度! 絶対零度!」
ぐは!
これは凄い! と言うか、見ていて爽快になる。
10段目までの鬼が、氷漬けになったと思いきや、一瞬で消える!
そして、11段目から上に居た鬼達が、下に降りてくるのだが、待ち構えていたクリスさんに、またしても同様に瞬殺される!
ちなみに俺は、最初に『マジックブースト』を、クリスさんにかけただけ。範囲魔法の場合は、『ダブルマジック』が効かない訳では無いのだが、選択する対象が多すぎて、まず不可能である。
俺達は、ローズを先頭に、次の踊り場まで駆け上がる。
「よっしゃ、次や。この、おかめ天女らには、あんま魔法が効かへんねん。そのくせ、こいつらは範囲魔法を唱えてきおる。せやけど、物理防御は低い。なんで、ここは、わいとローズちゃんの出番や。あと、わいら以外は、そこで待っとってや。この安全地帯の中なら、大丈夫や。ほな、クリス、下準備頼むわ。」
「分かりましたわ。スピードアップ! スピードアップ! パワーブースト! パワーブースト! マジックバリア! マジックバリア!」
クリスさんは二人に連続で支援魔法をかける。
う~む、実は俺も不要だったのかもしれない。少し凹むな。
「よっしゃ! ローズちゃん、行くで! 称号の付け替え、忘れんといてや!」
「はいっす! 言われるまもないっす!」
二人が安全地帯を出て、階段に足をかける。
その瞬間! 敵の総攻撃が始まった!
ありとあらゆる魔法が飛び交う!
「エクスプロージョン!」
「ファイアトルネード!」
「トルネードF4!」
「サンダーストーム!」
「〇ッタービーム!」
なんか、また意味不明のがあるな。
そして、二人のHPゲージが一気に減っていく!
しかし、1/3くらいまで減ったところで収まった。
ふむ、一通り喰らうと、暫くは唱えて来ないようだ。こいつらにはリキャストタイムがあるのかもしれない。
すると、クリスさんが安全地帯から一歩出る。
「ダブルハイパーヒール!」
なるほど、安全地帯の外にいる奴には、魔法が効かないからか。
この一発で二人のHPが全回復し、クリスさんは、何事も無かったように戻ってくる。
そして、二人の反撃が始まる!
サモンとローズは、左右に分かれ一気に5段目まで駆け上がる!
「お返しや! 二刀連斬舞!」
「アクシズメガラッシュ!」
二人の最上位の範囲攻撃が平安天女を襲う!
しかし、流石はこのクラス、一撃とは行かないようだ。
だが、二人の攻撃は止まらない!
そのままスキルを使わない通常攻撃で、周りに居る奴を、次々と斬りつける!
何体かが消え、その隙間を埋めるように、上に居た連中が、滑り降りて来る。
良く見ると、二人の称号が、先程までの『神の試練を打ち破りし者』から、『災厄を屠りし者』に替わっている。
「ローズちゃん、そろそろ来るで!」
「はいっす!」
そして、二人の称号がまた元に戻る。
「流星雨!」
「ファイアストーム!」
「トルネードF4!」
「ロッククラッシュ!」
「ファン〇ル!」
先程の繰り返しだ。
再び二人のHPが一気に減るが、レッドゾーンにまでは至らない。まあ、そうなったら、強制転移でここから消えてしまうのだが。
また、クリスさんが一歩踏み出し、回復魔法。
そして、二人のスキル攻撃により、今度は殆どの敵が消えた。
更に二人が止めを刺して行くと、再び上から11段目より上に居た連中が、全員滑り降りて来る。
ふむ、おかわりか。しかし、もうこれは決着がついたな。
先程と全く同じ手順を経て、次の踊り場までの敵が全て消えた。
「おっしゃ。ええ感じや。次もこの調子で行くで。」
今回は、鬼と天女の両方なので、クリスさんが最初に範囲魔法を唱えるが、後はほぼ同じだ。
あっさりと全滅させる。
「いや~、君達は本当に凄いですね~。僕も何か手伝えるかと思っていたのですが、全く必要無かったですね。しかも、これ何ですか? レベルが一気に15も上がって、42ですよ?」
「あたしもタカピさんと全く同じ意見ね。それでレベルも45よ? パワーレベリングとは良く言ったものね。」
「タカピさんもカオリンも、すぐに出来るようになるっす! こういうのを繰り返せば、あたいらだけで最高難度に挑戦できるっす!」
俺達は、現在、ボス部屋の扉の前で小休止している。
そして、俺も同感だ。レベルは既に55。殆ど何もしていないので、かなりの罪悪感だ。
「まあ、初めてやとびびったやろな~。わいらはこんなん当たり前になってしもたけどな。せやけど、こっからが本番や。皆、気張るで! 準備はええか?」
「「「「「お~!」」」」」
俺が扉の窪みに手を触れようとすると、ローズがクリスさんに何やら耳打ちしている。
すると、クリスさんが驚いた顔をして聞き返す。
「それ、ローズちゃん、本当ですの?」
「これはあたいの、ただの勘っすけどね。多分、不可能じゃないはずっす。」
「分かりましたわ! もしそうだったら、当然そうしますわ!」
ん? 何の話だろう?
カオリンもタカピさんも意味不明のようだ。
ただ、サモンはこれだけで理解したのか、黙って頷いている。
全員で窪みに手を触れ、最後に俺が中心の白球に手をあてる。
以前と全く同じ、重い音と共に扉が開け放たれた!
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