第43話
「どうぞ。こちらに座って」
姉妹は女性刑事と向かい合わせで座った。高坂は姉妹の後ろで様子を見守っていた。
「一週間、二人はお水と少しのグミ以外何か口にしてた?」
「ううん。何にも無かったもの」
「そうよね」
「そういえば…」
後ろで姉妹の様子を見守っていた高坂が、重い口を開いた。
「二人、まだ病院に連れてっていないんです。昨日はすぐにお風呂に入った後、二人ともすぐ寝ちゃって…」
「そうですか。大丈夫ですよ。今から警察病院に連絡して、ここで手当てしてもらうようお願いしますね」
「そんなこと…大丈夫なんですか?本当は二人が発見された直後に病院に連れて行かなければいけなかったんですよね?」
「普通の場合はそうですが、このようなケースは例外です」
「このようなケースって…?」
「昨日子供たちを送り届けた際、琴美ちゃんが裸で驚かれたと存じますが、事件後に琴美ちゃんの着衣が倉庫で燃やされている事を確認しました。羽織るものもありませんでしたし、本来パトカーに常備されている筈のウィンドブレーカーも持ち合わせておりませんでしたので、もし病院にすぐ搬送したとしても着るものが無ければいくら病院の空調が整っていても、低体温に陥る可能性があり、いち早く送り届け、体を温めて貰うのが賢明だと判断させて頂いたためです」
「でも、すぐにお風呂に入れてあげてくださいとは言われませんでしたけど…」
「琴音ちゃんが分かっていたんです。すぐにお風呂に入ろうねって、何度も話しかけていましたから」
「確かに…琴音ちゃんに引っ張られて脱衣所に向かった記憶があります」
高坂はそう言うと、琴音の方を見た。
琴音は物珍しそうに辺りを見回していた。琴音は大人の視線に気付いたのか、再び女性刑事と目線を合わせる。
「早くお風呂に入れてあげたかったのね」
「うん。琴美、寒そうだったから。しかも慣れないところのお風呂に入るとパニックを起こしちゃうの。だから刑事さんには悪いと思ったけど、また今度にしてくれないかって頼んだの」
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