第36話

その頃、琴音は施設の中に入り、共同スペースのドアを開ける。児童全員と、職員数人が一堂に会するこのスペースは、琴音のお気に入りの部屋だ。ドアを開けるなり、子供たちの声が響く。お帰りなさい。無事で良かった。様々な声に包まれながら、琴音は高坂の前に立った。

「高坂さん」

「お帰りなさい。琴音ちゃん。あれ?琴美ちゃんは?一緒じゃないの?」

「琴美、頭とお腹痛くなっちゃって、気持ち悪いって言ってたから、入り口入ったところまでお巡りさんが来てくれて、今そこで待っててもらってる。職員さん誰か呼んで来てって言ってたよ」

「そう。じゃあ須藤さん。しばらくお願いしますね」

須藤と呼ばれた男性職員は、子供たちの世話をしながら返事をした。

「じゃあ行こう。入り口まで一緒に行こうね」

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