第34話

「二人とも本当に無事で良かった」

非喫煙者の男性刑事が再び姉妹の前に立つ。

「助けてくれてありがとう」

「構わんよ。お仕事だから」

すると、姉妹の前にパトカーが止まり、女性刑事が運転席から出て来た。

「さあ、帰ろう。乗って」

姉妹は手を繋ぎ、車に乗る。パトカーは二人を乗せ、朝日が輝く道を颯爽と走り続ける。車の中では、女性刑事が琴音たちに話しかけ続けている。

「施設の人には言ってあるから、心配しないでね」

「怒られないかな?」

「大丈夫よ。琴音ちゃんのせいでも琴美ちゃんのせいでもないから。きっと、無事で良かったって言ってくれると思うよ。ずっとその事気にしてたの?」

「だって私、犯人の車に乗った。車には乗っちゃダメって言われてたのに、乗っちゃったから…」

「私からも上手く説明するから。琴音ちゃんは悪くないんだから」

「でも…」

「そうだ。琴美ちゃんは大丈夫?」

「お姉ちゃん…痛い…」

「大丈夫よ。琴美。もうすぐ着くからね。あったかいお風呂入ったらきっと良くなるから」

「琴音ちゃん。無理しないでね」

「どうしたの?いきなり」

「あなたの事が心配なの。一人で妹さんの世話もしなきゃいけないし…。迎えも行ってるんでしょ?」

「私は大丈夫だよ。お巡りさん。妹には私しかいないし。ママたちと約束したの。妹を守るって」

「でも、まだ小学一年生なのに…」

「私は辛いなんて思った事ないよ。妹がいてくれるから笑っていられるし、一人じゃないって分かったから」

「そう。分かった」

女性刑事は身を引いた。この子なら大丈夫。何となく、そんな気がした。そう思わせるくらいの強さが、この子にはある。

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