第33話

「あのね、お姉ちゃんが来てくれる前にね、服脱いでこの中に入れって言われたの。それでね、服脱いだらね、冷たいお水の中に入れられたの。上から押されてね、気付いたらお姉ちゃんが来てくれてたの」

「そう言えば服は?琴美の服」

「それが…」

女性刑事が、重い口を開いた。

「近くに倉庫があるの、知ってる?」

「うん。ちらって見ただけだけど」

「あの倉庫に琴美ちゃんのお洋服も置かれてたんだけど、その倉庫が誰かに

火を点けられたみたいなの」

「じゃあ琴美の服は…?」

「燃やされて、もう残ってないそうよ」

「お気に入りのワンピースだったのに…」

「琴美。お姉ちゃんがまた買ってあげるから。ね?」

「寒いよ。お姉ちゃん…」

季節は初冬。裸のままの琴美には、冷たい風が身に染みる。

「続きはまた今度にしてくれない?妹をあったかいお風呂に入れてあげたいし、洋服も着せてあげたいから…」

「分かった。パトカーで送るよ。ちょっと待ってて。すぐ準備するから」

「お腹と頭痛い…」

「琴美。大丈夫?帰ってあったかいお風呂一緒に入ろう」

「うん。入る」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る