第16話
一粒の涙が妹の顔に落ちた時、姉の想いが届いたのか、妹がうっすらと目を開ける。
「…お姉ちゃん…」
「琴美!良かった…。良かった」
「寒いよ…」
妹はブルブルと震えている。浴槽から出す時に気付いたが、琴美は服を着ていない。
「大丈夫。身体拭こうね」
琴音は近くにあったタオルを取り出し、妹の身体を拭いていく。
「苦しかったよ…。お姉ちゃん来てくれなかったらどうしようって思ってた…」
琴美は震えながら泣きじゃくった。身体を拭き終えた琴音は妹を温めるように強く抱き締めた。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんはいつでも助けに行くよ。琴美を置いては行かないからね。苦しかったね。よく頑張ったね。間に合って良かった。それより、お洋服はどうしたの?」
「脱がされたの。男の人に」
「あの人か…それにしても大きなお風呂だね」
「お姉ちゃん。夜はどうするのかな」
「何が?」
「だってあの人もお風呂入ったりするでしょ?その間私たちはどうするのかな」
「一緒に入るんじゃないかな…」
「じゃあ、その後は?濡れた所でおねんねするの?」
「分からないよ。聞いてみようね」
「どうなっちゃうの?私たち、死んじゃうの?」
「分からないよ。何とも言えない」
「怖い。怖いよ」
「大丈夫」
姉は、再び妹を抱き締める。一人じゃないよという想いを込めて。
「お姉ちゃんが付いてるから。離さないから。ずっと一緒だからね」
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