第15話

ロビーを抜けると、そこは浴室兼化粧室だった。琴音はすぐに勘付いた。ここに閉じ込められると。そして、この広い浴室内に先客がいる事も。

「ここに閉じ込める気なの?」

「ああ。ここなら好都合だろ。シャワーも浴槽も使っていいから」

「分かった」

犯人は浴室に外側から鍵を掛けた。残された琴音は、先客を探した。用心深く探していると、水が貯められた浴槽で見つけた。ずっと探していた大切な存在を。琴音はすぐに浴槽から出し、呼び掛ける。

「お願い。私の側からいなくならないで…。一人にしないでよ…。目を開けて。琴美!」

琴音は溢れる涙を堪えることが出来ない。

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