第13話

琴音がトラックの助手席に乗ると、すぐにトラックはその場を離れた。

「妹は寒くないところにいる?」

「さっきからうるせえな。黙ってろ」

男はフードをかぶったままハンドルを左に切る。一体何処に行くのだろうか。琴音の心の中には、不安と使命感が、ぐるぐると渦を巻いていた。助けを求めるように窓の外を見つめても、返ってくるのは妹との思い出ばかりだった。お姉ちゃん。お姉ちゃん。自分を呼ぶ、たった一つの血の繋がった命。お姉ちゃん助けて。そんな言葉を紡ぎ出しているように、鮮明に響いた。その時だった。琴音の身体が一瞬浮いて重心が前に傾いた。急ブレーキを掛けたようだ。いきなり車が止まり、驚きを隠せない琴音に、犯人は低い声で呟いた。

「着いたぞ。金の入った鞄を持って中に入れ。靴は靴箱に入れろ。そうしたら俺の後を付いて来い」

言われ、琴音は身体を起こした。そこには、大きな一つの住居が立ちふさがっているように存在していた。

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