第3話


 人間は人魚は女だけだと思っているようだが、もちろん男の人魚もいる。


 女だけでどうやって繁殖すると言うのだ。


 ただ男の人魚の数は少ない。


 人魚一族は女系なのだ。


 琉海は1度も人魚の男としゃべったことがない。


 数が極端に少ないせいもあるが、大事な伝説の姫に万が一のことがあってはと、人魚の男は琉海に近づけないようにされていた。


 それでもその伝説の姫を遠目に一目見た人魚の男たちはその美しさに魅了された。


 ずいぶん前に人魚の男と恋に落ちた伝説の姫がいたそうだ。


 2人は手に手を取って駆け落ちをしようとしたがすぐに見つかり、人魚の男は真っ暗な深海に鎖で繋がれた。


 2人はその後2度と会うことは叶わず、人魚の男は死ぬまで深海に繋がれていたそうだ。


 それほど美しい容姿を持って生まれてくる姫たちがなぜ人間の男の心を射止めることができなかったのか。


 答えは簡単だった。


 そもそも人魚は実在しないと思っている人間が、人魚に遭遇したときどんな反応をするか。


 腰を抜かすか、驚き怯えて人魚を滅多打ちにするか、または捕まえて大儲けしようとするかのいずれかだ。


 人魚に恋して契りを結ぶだなんて、夢のまた夢。


 人魚の姿のままでは決して人間の男を射止めることができないと悟った人魚たちは、人間に化ける術を編み出した。


 伝説の姫だけではなくすべての人魚が人間になることができた。


 ただ人魚が人間の姿でいられるのは1年間だけだった。


 人間になった人魚は1年後、みな死んだ。


 人魚の寿命は長く平均300年。


 その人魚たちにとって1年という時間はあまりにも短すぎる。


 そのせいかわざわざ人間になる人魚はほとんどいなかった。


 ずっと昔に若い男の人魚が人間になったとか、ならなかったとか、その程度だった。


 伝説の姫も1年間のうちに人間の男と契りを結べなければ死ぬ運命だった。


 ただ伝説の姫は他の人魚と違う点が1つだけあった。


 それは相手の男を殺せば姫はまた元の人魚に戻ることができるのだ。


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