第8話 テケテケオバケ
episode8 テケテケオバケ
鈴木君はひとりで残ったことを後悔していた。
「どうせ、テケテケオバケなんてつくりごとだよ」
「でるわけないって!!」
ツトム君も学君も相手にしてくれない。
だってこれで一週間も張りこんでいるのだから。
ふたりとも、張り込みにあきて帰ってしまった。
お化けの名前は。
テケテケ。
放課後昇降口にでる。
上半身だけで。
右手に大きな鎌をもっている。
両手で走る。
テケテケとおとをたてて走る。
目があうと「殺すぞ」と鎌をふるう。
下半身をきられてしまう。
テケテケお化けのように上半身だけになってしまう。
そんなふうに怖い話だ。
いま、鈴木君はその昇降口の壁の陰に潜んでいる。
中央小学校の校舎はすでに、半分はきりはなされていた。
もうじき、この正面入り口のあたりも解体される。
そのころは、ぼくは中学生になっているだろう。
なつかしい小学校の校舎がなくなってしまう。
さびしいな。
夕暮れて男体山颪が吹きだした。
そのときです。
音がした。
なにかかすかに動く気配がする。
テケテケテケテケ。
話にきいて怖がっているのと、リアルに見るのとでは。
怖さがちがった。
オバケの〈出現〉の現場にたちあってしまった。
テケテケテケテケ……。
音はします。
姿は見えません。
テケテケテケテケテケ……………。
鈴木君はこわくなって校庭に飛びだしました。
テケテケ。
うしろから音が追いかけてくる。
こわくてふりかえることはできない。
校庭にたおれている鈴木君を発見したのは父親でした。
帰りの遅い息子を心配してさがしにきたのです。
鈴木君はオバケを見たといいました。
テケテケテケという音まできいた。
追いかけられた。
怖かった。
と泣きだした。
校舎半分は解体された。
建物の嘆きじゃないかな。
そんなことをいう先生もいた。
古い建物には霊がやどっている。
校舎のお化けだよ。
この怪談に結論が出されました。
でも、鈴木君はたしかに追いかけてくるお化けの気配を感じました。
あのとき勇気をだしてたちどまり、ふりかえっていれば――。
……目があってしまったら。
大きな鎌で下半身をきられていたでしょう。
やはりふりかえらないで逃げて正解だった。
鈴木君はそうおもいました。
テケテケテケテケテケテケ。
中央小学校は新校舎が落成しました。
いまは、テケテケお化けの話はだれもしません。
やはり、あれは古い校舎に棲みついていたい霊だったのでしょうか。
だとしたら、今はどこに移転したのでしょう。
あなたの学校で。
放課後薄暗い教室に居残りしていると……。
どこからともなく。
耳にテケテケテケテケというかすかな音がきこえてきませんか。
ほら……あなたの後ろから。
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