第6話:不安
一団は、森林で伐採作業を進めていた。
巨大な
しかし、慣れない悪路に加えて、危険と隣り合わせの行軍で、さすがに疲れの色が隠せない。
「なんだ、もう、お疲れか?」
隣で、元冒険者が尋ねる。
木の
「いや、大丈夫です。襲撃も今のところないですし……」
魔物との戦いの後、彼は度々、自分の面倒を見てくれていた。
「なぁ、この辺で特に注意しなくちゃならないのがいるんだ。こいつと出会っちまったら……」
「生きて帰れる保証は無い、ですか?」
言おうとしたことを先に言われ、ビックリした顔を自分に向けてくる。
「なんとなく、分かりますよ。ここに来てから周りの人たちの様子? と言うか、雰囲気が変わりましたから……」
周囲はどこか落ち着かない様子で、ピリピリとした緊張感に満ちていた。
それに、隣の男も
この会話が、周囲の緊張感が
「まったく、本当に生意気な」
ハァとため息をついて、ばつが悪そうに頭を
「でだ。そいつは
そんな会話をしながらも、木材の運搬に使う
「あの片腕の人、どうなるんでしょう?」
話の合間を見て質問すると、彼は大きなため息をつきながら答えてくれる。
「助からねぇな。ありゃ」
「そんな、どうにか出来ないんですか? 人の命より大切なものはないって…」
「ここじゃ、明日の自分がどうなるかも分からん。ご立派な道徳感で、判断を間違うなよ」
そう言うと、元冒険者の男は離れていった。
確かに、この異世界と日本の状況は全く違う。
―― 長い平和と豊かさを
―― 生と死が隣り合わせの明日をも知れぬ世界
日本で育った
※※※※※※※※※※
木材の確保がおおかた終了し、一団は村への帰路についた。
木材で
道中、彼は色々なことを話してくれた。
村の者ではなく、今回の木材調達のために雇われた冒険者であること。病気の妹がいること。片腕を失ったがこの先も冒険者を続けたいことなど、いろんな話を聞かせてくれた。
途中、休憩のために彼を
眠ってしまったのかと思い、彼の顔を覗き込むと彼の目は夢で見た光景と同じように光を失っていた。
慌てて周囲に彼の異変を知らせるが、様子を見てくれたダンと元冒険者は、目を伏せて首を横に降ることしかしなかった。
自分にも分かっていた。
初めて魔物を倒した時、ゲームやお
あるいは、ここは別の夢で、いつか目覚めることを、期待していた。
しかし、その
どうしようもなく
※※※※※※※※※※
しばらくして、もう少しで村が見える距離まできたとき、前方の道端に頭を抱えて座り込む一人の男がいるのを見つけた。
その男の身なりは商人の様だったが、小刻みに震えて
「……盗賊にでもあったのか?」
不審に思った元冒険者が、一団を止めて遠目に様子を
「ありゃ、ロイの奴じゃないか?」
それは以前、村で
その名前を聞いた時、自分の心に嫌なざわめきが生じ、背筋が冷たく伸びて全身に鳥肌が立つを感じた。
「おい、ロイ! どうしたんじゃ? こんなところで……」
「……じゃない。ぼく、じゃ、ない。……の、せいじゃない。ぼく、せいじゃない」
ダンが商人に近づくと、彼は何かをブツブツと
自分の呼び掛けに答えようとしない商人に、ダンが思いきって手を伸ばした
「僕の、せいじゃぁなあぁぁぃぃ!」
商人は狂ったように叫ぶと、ダンの手を振りほどいて、奇声をあげながら走り去ってしまった。
「な、なんじゃ?」
ダンを始め、一行が
「け、煙だ! あ、あれは、村の方だ!!」
「な、なんじゃと!?」
ダンが
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