第28話:小鬼
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残党を山奥に追い立てるために追撃の指揮をとっていると、シンと冒険者達が山の方から姿を現した。
「シン。やっぱり、あなた達だったのね」
シャルが声を掛けるが、シンは黙り込んだままだった。彼もまた、自分の想像を超えるものを
それでも、彼らには伝えておかなければならないことがあった。
「シン。あなた達のおかげで私たちは助かった。感謝します」
「王女様……」
「ヒサヤはどこにいるの?」
「それが……、地図を持ってた奴の村に」
それを聞いて、何故か嫌な予感がした。
暴走を食い止めたとはいえ、未だに
「アリサ! どこに行くの!?」
不安にかられてその場を離れようとした私を、エマが引き止める。
「あなたは
「でも……」
「私が行く」
私達のやり取りを見ていたシャルが、スッと前に出る。彼女は、私以外のことで自ら動くことは
それを見ていたエマも、珍しいものを見たように驚いていたが、ハァとため息をついた。
「あなただけでは、接近戦は不安でしょ?
……あの子にも行ってもらいましょう」
そう言うと、エマは一人の人物を呼びつけた。
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北方の少年、コルトの案内で山道を目的の村に向けて進む。
一緒に付いてきたのはウルとヒルだけだ。シンはアリサの軍に合流させるようにした。冒険者とアリサ達とのつなぎ役が必要だったし、相当な精神的疲労があるようだったからだ。
ちなみに冒険者たちとの契約は
山道を進みながら、案内人の少年に気になったことを聞いてみることにした。
「コルト、今から向かうのは君の村なんだよな?」
「あぁ。そうだ」
「
「本当だ。村は
確かに地図で見たところ、他の村に比べてこの村だけが異様に北に
他の村々が
「でも、なんで君一人がノルの街で行き倒れてたんだ? 両親とかは……」
「……死んだ」
「え、なッ、……」
表情を変えず淡々と語る少年に、こちらが口ごもってしまう。
「
自分たちの命可愛さに、他人の命を平気で奪う人々。その異常さが、これから向かうところへの不安を
※※※※※※※※※※
だいぶ森の奥地に進んで、ようやく村の入口付近に到着する。村は丈夫そうな丸太で周囲を完全に
「……
コルトの提案に従って、村の祭壇へと直接向かうことにした。目的は別にあるのだから、わざわざ危険を冒す必要はない。
祭壇は直ぐに見つかった。大量の食料に加えて、数個の大きい
「ソニア! どこだ、ソニアァァ!!」
コルトが瓶に向かって叫んだとき、奥の
「ソニア!?」
走って向かおうとするコルトの肩を掴んで引き止め、もう片方の手で剣の
そして、木陰からは数匹の
※※※※※※※※※※
初めて正面から
そのとき、コルトが押さえていた手を振り解くと、短剣を引き抜きながら
「お前らがァァァ!!」
「止せ!」
悲鳴を上げるコルトと、それを見て
そこへヒルと共に剣で斬りかかると、
明らかに意思を持ち、
数匹を相手にするだけで、これだけ
「
ヒルは腰から短剣を引き抜くと、それを小鬼の方に向かって投げる。その短剣が小鬼の頭を突き刺したのと同時に、彼はもう一匹の小鬼の首を
あっという間に仲間が殺られていく様を見て、残り二匹の
そのうちの一匹は、ヒルを格上の相手と確信して、こちらへと襲いかかって来た。
だが、その動きは今までの魔物に比べて圧倒的に遅い。狼と比べれば、スローモーションのような動きだ。
肉と骨を断つ嫌な感触が手に残る。思えば、これまでの戦いは、向かってくる相手の力を利用していただけだった。今、自分は初めて自分の意思で、相手を倒すための剣を振るっていた。
そんなことを、考えていたからだろう。もう一匹が、こちらに吹き矢のようなものを構えているのに気が付かなかった。
チクッ
不意に肩に突き刺さった針の痛みで我に返り、
「……こいつらは、恐らく
「はい。早くここから離れたほうが良さそうです」
肩に刺さった針を抜き、ちょっとした違和感はあったが、早くここから逃げ出すことにしたのだった。
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