辺境の村で
第1話:異なる世界
重い
テントのような場所でやっとの思いで体を起こすが、
ぼやけた頭で、どうにかポケットの中身を探ってみるが、
他に持ち物はないのかと起き上がろうとしたとき、入り口から人が入ってくる気配がした。
「あ、お兄さん! 気がついた?」
十歳くらいの少女は、
「……ここは? どこなんだ?」
「私の村だよ? お兄さん、村の入り口で倒れてたんだって……、覚えてない?」
持ってきた
「……また、やっちまったのかなぁ、俺。近くに駅とかコンビニとかある?」
「……コンビニ?」
よく見ると少女の瞳は、
しばらく考えこんでしまっていると。
「お兄さん、大丈夫?」
顔を
「あぁ。君、名前は?」
「私? ステラ!」
少女は嬉しそうに答えてくれた。
「俺はヒサヤだ。よろしく」
「うん! よろしくね、ヒサヤ!」
名前を呼ばれた瞬間、スッと頭の中の
お互いの挨拶が済んだところで、また一人、入り口から入ってくる人物がいた。
「ほぉ、目覚めたのか?」
「おかえりなさい! ヒサヤ、私のおじいちゃん。倒れていたヒサヤを、ここまで運んで来たの」
ステラに紹介された
「あの、……助けていただいて、ありがとうございます」
お礼を言う自分に、老人は「いやいや」と軽く答えながら、目の前に腰を下ろした。
「なぁに、あのまま放っておくこともできんでなぁ。ヒサヤ? と言うのかい?」
「あ、……あれ?」
思わず言葉を詰まらせる。自分のフルネームを伝えようとしたはずなのに、何故か名字が出てこない。頭では認識できているはずなのに、全く言葉にすることが出来きずに
「どうかしたのかい?」
「い、いえ、なにも……。その、……よろしくお願いします」
「ああ、よろしくのぅ」
初老の男性から差し出された手を
「わしは、ダンと言う。そこの子は、
「おじいちゃん! 私、もう挨拶したよ? ねぇ、ヒサヤ!!」
そう言いながら、ステラは
「……えらく気に入られたのぉ?」
「えぇ、
ダンと
「で、お前さん、何でこんな
「それが、全然、覚えて無くて……、ここは、どこなんですか?」
「エルドの国の外れさね。ワシは一応、ここの
まさか、聞いたことのない国の名前が出てくるとは思っておらず、
「エ、エルド? ここは、日本じゃないんですか?」
「……ニホン? お前さんの国か? ……悪いが、聞いたことがないのぅ」
「……」
まさか気を失っている間に外国に来てしまったのかと、絶句する。だが、それと同時に、不思議に思うこともあった。
「あ、あの、その言葉は、どこで?」
日本で産まれ育った自分は、日本語以外しゃべれない。それなのに、ダンやステラの言葉は、しっかりと理解できる。
つまり、言葉が通じているのだ。
「うん? あぁ、ちっと
「アルモニア?」
「……ここいらじゃ、アルモニア語は
「え!? 話している?」
ダンやステラが日本語を使っていたのではなく、自分が知らないはずの言葉を使っていると告げられて頭のなかはパニック状態だった。
「こ、ここは、地球のどのあたりの国なんですか!?」
完全に動揺し、思わず胸ぐらを掴むような姿勢でダンに詰め寄る。
その必死な姿に、ダンは
「待て! 待て!! 少し落ち着きなさい。
さっきからお前さん、訳の分からん事ばかり言って、どうしたんじゃ!? チ、チキュウ? とは何じゃ?」
この言葉を聞いて、理解した。
ここは、自分のいた世界とは別の
自分は、この世界に紛れ込んだ……
大きな
すると、不意に
「ヒサヤ、大丈夫? 具合悪い?」
ステラは小さな手を
その優しい温もりが、
「……ありがとう。もう大丈夫だよ」
「落ち着いた? よかった! じゃあ、そろそろご飯の準備するね!」
そう言いながら、ステラはテントから出ていった。
自分が落ち着いたのを確認し、ダンが再び話しかけてくる。
「落ち着いたかい?」
「……はい。すみませんでした」
「気にするな。……確かにお前さん、ここらじゃ見たことのない格好をしとるしのう。それに瞳や髪もワシらと大分違うようじゃ。黒い髪、まるで姫様と同じじゃ」
「姫様?」
自分と似た特徴の人物。
もしかしたら、自分と同じく日本からこの世界に来た人物だろうか? しかし、"姫様"と言う言葉が引っかかる。
「エルド王族の第一王女様じゃ。
王族ということは、
その後、ダンはこの村の話をしてくれたのだが、上の空で聞いていた。自分の今の状況を受けとめるので、精一杯だった。
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