第10話 こんにちは大阪
14時半、新幹線が発車する。窓側に俺、通路側に父さんが座った。窓の外を見ると青空が広がっている。
流れていく町の景色を眺めていると、左肩が叩かれた。
「ん、何?」
「向こうでの生活について話しておきたい」
「あぁ」
新居がどの辺りなのか、
次の母親がどんな人なのか、
次の高校がどこなのか、
まだ聞いてないことが沢山ある。
「学校に関してだが……」
そう言いながら父さんは一冊のパンフレットを渡してきた。
「
「ほーん……」
パンフレットを開くと、最初のページに『常に余裕をもって』という教訓が書か
れていた。途中はすっ飛ばし最後の方に書かれてある交通アクセスや合格実績を見る。
アクセスは最寄り駅からは徒歩5分で、合格実績は国公立で見る限りだと前の学校と変わらない。
「編入試験とかどうするの?」
一般的には入試よりも編入試験は厳しいと聞く。ある程度の準備期間は欲しいところだ。
「それなら必要ない」
「え」
自分の耳を疑った。どういうことだろう。
「模試の成績表を送ったら合格だったぞ」
なるほど、そういう制度があるのか。
そういえば少し前に、模試の成績表を貸してほしいと言われた気がする。そのときは理由が分からなかったが今になって理解した。
しかし、あれを貸したのは年始めくらいだったので、一つ疑問が残るが今は気にしないでおくことにした。
「じゃあ特に準備することはないの?」
「学校への挨拶と制服の採寸ぐらいだな」
なら特に面倒なことも無さそうだ。これで一つ心配事がなくなった。
新しい家族や次の家について聞いてもよかったが、どうせ今日分かることなので聞かないでおいた。
音楽を聞いたり、睡魔と勝負をしていると気付けば京都駅を過ぎていた。
「そろそろ準備しとけよ」
「はいはい」
そして17時、新大阪に着いた。
ホームを降りて改札を出る。そこから大阪メトロに乗り換え梅田へ向かう。
電車内は人が多く、都心部に近づいていくので若者が多いように感じる。
そして梅田駅に着いた。駅の構内を父さんに着いていく形で進んでいく。
歩くこと20分ほどで待ち合わせ場所らしいレストランについた。
そのレストランはファミレスのような明るさや賑やかさはないものの、堅苦しさを感じさせない程度のちょうど良い高級感があり、とても自分好みであった。
案内された席に向かうが誰も座っていない。どうやらこちらのほうが早かったようだ。父さんが座り、その横に自分も座る。
さて、次の母親はどんな人なのか。恐い人でなければいいが……
そんなことを考えていると二人の女性がこちらに向かってくる。
一人は黒のロングコートにワインレッドのニット、ベージュのパンツを身に纏った30代くらいの女性。黒髪のサイドテールとニコニコとした表情が特徴的だ。
もう一方はネイビーのニットに白のスカート、赤のバッグを身に着け、ショートブーツを履いた同年代らしき女の子。黒髪ロングで女子にしては身長が高く、白くしなやかな脚がとても健康的だ。
恐らく前者が新しい母親の真理さんだ。
じゃあ後者は?親戚だろうか。叔母にしてはあまりにも若すぎるが。
混乱しているうちに、真理さんは父さんの向かいに座り、もう一人の子が俺の向かいに座った。
父さんが口を開く。
「久しぶり、真理さん。それに雪ちゃんも」
「ふふ、お久し振りです、
「お久し振りです」
真理さんは笑顔で返し、『雪ちゃん』とよばれた女の子はそれに続いて返した。
そして父さんは俺のほうを見て
「こちらが息子の広行です」
言われてとりあえず挨拶する。
「……はじめまして、広行です」
「ええ、はじめまして、真理です」
「雪です。よろしく」
真理さんはニコニコとしたまま返し、雪さんも微笑を浮かべながら返した。
「…………」
何故だろう、雪さんがこっちをじっと見ている。
整った顔立ちで、なおかつ同年代らしき女の子に見つめられると嫌でも体が固まる。
「え……えっと」
な、なんだろう。何かしたか?
困っていると隣から笑い声が聞こえた。
「いくら初対面だからって妹に対して緊張しすぎじゃないか?」
思考が止まる。
は?…………妹?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます