第3話 痛み
ラーメン屋さんから家までは歩いて30分程度かかる。
いろんなことを振り返りながら住宅街や商店街などを通りすぎる。
今までなんとも思ってなかった街並みも、あとちょっとで見納めだと考えると少し寂しく感じる。
そんな自分のなかに潜んでいた地元愛の存在を発見しつつ歩き続ける。
そうしていると、数少ない、だが決してかけがえのない友達と昔よく遊んでいた公園についた。
なんとなく中に入って、少し錆び付いたブランコに座ってみる。
座った瞬間に頭のなかで、その友達と過ごした日々が、二人の幼馴染たちとはしゃぎまわった記憶が駆け巡っていく。
あぁ……そうか。あいつらとも、もうすぐ別れなくちゃいけないのか。
その事実に気付いて初めて、引っ越したくない、と感じた。
あの二人にはちゃんと挨拶をしておこう
そう強く決心し、ブランコから離れた。
たとえどれだけ寂しくても、引っ越すのは決定事項だ。いつまでも昔の思い出に浸っているわけにもいかない。
何かを振り切るように、早足で公園から離れる。
だが、どれだけ歩いても、このモヤモヤとした気持ちは晴れない。それどころかジワジワと粘っこい気持ち悪さが心を侵していく。
「……」
こらえようとしても自分の内側から感情が溢れ出てくる。
「……なんで…………なんでこうなるんだよ…………」
視界が滲んできて、街の風景を目に刻む余裕なんてなくなっていた。
それどころか見るたびにどうしようもなく胸が痛くなる。
もうこれ以上街を見るのが嫌になり、逃げるように走って家に帰った。
家に着く頃には大方気持ちは落ち着いていた。時計を見ると9時を過ぎていた。
「ただいま」
そう言って家に入ると、誰もいない廊下を通ってすぐに風呂場に入った。
急いでシャワーを浴び、すぐに自室に戻る。
そして、もう余計なことを考えてしまわないようにベッドに入った。
けれど、どうしてもいろんなことが頭をよぎり、なかなかすぐには眠りにつけなかった。
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