尊い。ただ尊い。

 プロローグの副題通り衝撃的な展開から幕を開ける、主人公「倉實礼」の物語。
 彼女は進学に際し、自らのことを誰ひとりとして知らない新天地「ネモフィラ女学院」へ赴く。全寮制のミッションスクールである当校は、ある独特な姉妹制度「ファミリア制度」を導入していた。多感な時期を過ごす礼を始めとした少女たちは、自らのパートナーたるファミリアと時に笑い、時にぶつかり、手を取り合って学院生活を送る――。

 全寮制ミッションスクールの女学院という舞台に添えられた「ファミリア制度」。ふたり一組での支え合いを目的とした制度ですが、物語はファミリアの少女一組一組を追う形で進行します。複数のファミリアがあれば複数の物語が生まれます。主人公、礼の選択により、実現し得なかったファミリアもあります。そんなifストーリーも読んでみたいほど、濃密な人間関係を描いております。

 各キャラクターのお話を詳しくさせていただきたいところですが、私からはひとつだけ。主人公「倉實礼」が大きなハンデを背負いつつも、ファミリアや寮の先輩たちと手を取り合い、挫けながらも、迷いながらも好きな人と歩んでいく、その様子が大好きです。
 ただ単に「百合はいいぞ!」と声高らかに叫ぶだけでは足りない尊さがあります。もちろん他のキャラクターたちが織り成す物語も美しく素敵なのですが、礼さんと透子さんの物語は群を抜いておりました。
 あまり詳しく書くとネタバレになってしまいますが、物語の終盤でとあるキャラクターに関する重大な秘密が明かされたとき、驚きながらもどこか腑に落ちてしまった自分がいます。序盤から散りばめられた伏線の数々も光る物語です。

 タイトルに込められた意味。あくまでも私の個人的な見解ですが、礼さんの手、ファミリアたちの手、先輩たちの手、支えてくれる全ての人々の手、それらを総括して「hand(s)」なのでしょう。複数形に括弧がついているのもなかなか考えさせられる部分ですね。

 まだまだ語り足らないところではございますが、この辺りで。
 少女たちが織り成す美しい物語。ぜひご一読ください!