2-2「えっ、えーーーっ!」

 一緒に帰ったのは初日だけだが、瑞樹さんと2人での登校は何となく習慣になっている。同じ家から同じ教室に通うのだから別々に行く方が不自然かもしれないが。

「昨日はごめん」

「そんなに似てました?」

「全然似てないですよ。ぼーっと考え事しながら帰ってきたから。角度でそう見えちゃったっていうか」

「充希ちゃんのこと考えてたんですか」

「うん、あいつに相談しなきゃならないことがあって」

で、考え事に没頭して、今は家に充希とは別に女子がいる事実が脳裏からすっぽり抜けていたのだ。

「気にしないでください。男の人にあんな風に呼ばれたのは初めてだったので、少しドキッとしただけですから」

あの顔はそういうことか。嫌悪の表情じゃなくてホッとした。

「俺だって女子を呼び捨てにしたことなんてないですよ」

 名前どころか、名字を呼び捨てにできる程度に親しい女子すらあまり記憶がない。もちろん、充希はおれにとって女子ではない。ということは瑞希さんは俺にとって初めて下の名前で呼んでいる異性なんだ。

しょうもない物思いにふけっていると、瑞希さんが急に立ち止まった。体ごとこちらを向いた。

「ドキっとしましたか」

「いやあ、そりゃあ、まあ、もちろん」

ドキッとしたのは「不審者を見るような目で見られたっ」と思ったからなんだけど。

両手で手を握られた。

「わたしはまだちょっとドキドキしてます」


気づいたら、おれは。


えっ、えーーーっ!

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