『青ざめる薔薇』しかまだ読んでいないのですが、とても良い作品だと思ったのでレビューを投稿します。
クローン少女と男の、二人で一対の彼らにしか紡げない物語だと思います。少女は常に自らの居場所を求め、男は彼自身の過去を、過去の贖いを求めていた。
「鏡」の挿話はとても美しいと感じました。人は他人に、自らの投影を見出し、それによって自らの確たる存在や尊さを認める。しかもそれは他人という鏡によってしか見出せない。僕は、そのような存在は多くの人にとって、家族であるべきだと思います。しかし僕達が浮かべる理想的な家族は、少女にとってはもちろん、男にとっても、存在しませんでした。
文乃さんの豊富な知識がこの作品に表れていてとても面白く読めました。
知識がただただ作品中に置かれているだけではなく、知識が少女と男の物語を彩っていました。