第2話 師匠の悩み
悩むより行動!そんな風に育ててくれた亡き親に、今は感謝だ。
建物の影に隠れ、セルの行動を追跡中。周りの目が痛いのは、別に気にしない。だってセルが心配だから、そんなことは気にしてられない。
悩む時間があるなら結果を出せ、と言われ続けた幼少時代。はい、今なら結果出せます!
おや、なんか気になる店でも見つけたのか辺りを見回している。一つの陳列品を見つけて、それに一点集中。
なんだろう。見たいけど、これ以上出たら見つかるし、今まで以上に気まずくなりそうだから、出るのは諦める。
セルは意を決したのか店内に入り、店の主人らしき人と話している。
話し終えたらしいが、何も買わずに店を後にする。
一体何をしたんだ?
セルが居なくなってから、見つめていただろう陳列品を探した。別に至ってシンプルなアンティークから、一生手に入らなそうな高いものまであった。
むむ。一体全体何を見ていたんだ!?一つ一つ品物を見たが、余計分からなくなってきた。
帰ろうと思った時に、ある一つの時計を見つけた。
それは新品というほど輝きはないが、錆びてもない。天のような藍色を鮮やかに用いて、時計自体は小さいのに大きく感じる。目立つという意味ではなく、なんというか、一目見たら忘れられない印象。
もしかしたら、セルはこれを見つめていたのではないだろうか?チラッと値段を見ると、買えないものではないが、高いのに変わりはない。
ま、まさか!好きな子にあげるのだろうか!?まぁ確かに高いから僕に言いづらいのは分かる。だけど、これぐらいなら頑張れば買えなくもないから、相談してくれれば良かったのに。
あえて言わないということは、それなりの考えがあるのだろうから、僕は何も口出しはしない。ただサポートぐらいはしてもいいよね?可愛いセルのためだから。
弟子の秘密を知った次の日から、僕は師匠なりに助言やら何やらしてみた。
一つはセルに毎月のお小遣いを奮発した。勿論何も知らないセルは動揺する。久し振りに動揺グクを見たなぁ。
二つ目は僕の経験談を元に恋愛話をしてみた。といっても僕の人生において恋というのに相応しい話は二つしかないけど。
一つはもちろん弟子のセルである。現在進行形なのでオブラートに包みこんで助言をした。ほら、だって、率直に言ったら告白になっちゃうからね。
もう一つはまだセルと知り合う前の話。僕にとっては大恋愛と言えるべき物語。まぁ、当時の僕は青かったから上がり易かったのも事実。いわゆる思春期ってやつ。
セルには作り話っぽく語ったけど、内心は結構恥ずかしかった。平然に話し続けた僕は頑張った。我ながらよくやったよ。
話しを聞いてるセルは器用に僕から視線を外す。なかなか目が合わないな。
──そろそろ意地の戦いな気が……。
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