むすび

 事件は解決し、小料理屋【源さん】に柳下、山浦、栗本、川崎が集まった。大将得意の刺盛りがテーブルに置かれている。ビールで乾杯をし、実質の勝利宣言を柳下がする。


「勝ったぞ。ある意味あのチリ毛にも」

「藤巻さんっスね、あの顔見たかったなぁ……」


 大将がかかかと笑いながら言う。


「ま、アンタらには感謝してもし切れないよ。それにしても、あんな可愛い娘さんが3人も……あ、オイラはやっぱ女房が一番だ」

「いやだわぁアンタ、でもホント、刑事さんには感謝だわぁ」


 山浦はビールを飲み干し、ハマチの切り身をがっつり取って口に放り込む。


「先輩食いすぎっす」

「あ? 彼女が食いっぷりがいい男は惚れるっつってるんだよ。文句あんのか?川崎」

「まぁ、蓼食う虫も好き好きってやつだな」


 柳下が笑って言った。山浦は柳下に訊いた。


「班長は?そろそろ」

「俺は結婚には向いてないから。それに、俺の趣味は別嬪さんを遠目でチラ見することだから」

「柳下さん、ヒきますよ」


 栗本が言った。あっ!と素っ頓狂な声をあげ、川崎が一枚の書類を取り出した


「どした?」

「西川さんからです、読みます! え~、このは」

たびだろうが? いい、寄越せ」


 山浦が奪い取った紙には、こう書いてあった。


「柳下班長以下、山浦、栗本、川崎を重大猟奇殺人事案対応専門の班として任命します。とさ」

「なんか、ビミョーだなぁ」


 そう言いながら、満更でもなさそうに柳下は言った。何故なら柳下は、知る人ぞ知る得意体質の持ち主なのだから


「ま、改めて皆さんの新しい門出ってことで、いい魚があるんだよ!俺が腕によりをかけて美味いの食わせてやっから!」

「よっ! 本家板前の源さん!」


 けらけらと笑う一同。時刻はもう既に0時を回っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦慄!殺人鬼板前の源さん 回転饅頭 @kaiten-buns

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ