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 C市役所はついぞ最近改築がなされている。白を基調にした清潔感のある中には、新築のような木材の香りがする。

 柳下が呼び止めた市役所職員は、胸にカードホルダーをぶら提げている。丸眼鏡にショートカットのリスみたいな小柄な若い女性だ。名前は会計課の蓮井優花はすいゆうかというようだ。柳下と栗本は手帳を見せると、話を聞かせて貰えるかを訊いた。


「ええ、あの、やっぱり占部さんのことですよね?」

「そうです。時間は取らせませんから」


 人数分の紙コップにコーヒーを淹れた優花は、ソファーに腰掛けるように促すとそれを柳下と栗本に渡した。


「割と人気のある方でした。仕事ができる方でしたし」

「ほう、失礼ですが蓮井さんは占部さんとは部署は?」

「違います、ですがやはり同じ市役所ですからよくお話をしたりとかは……」

「蓮井さんから見て、占部さんは?」


 栗本の問いに優花はキョロキョロと周りを見渡して小さな声で答えた。


「ちょっと、あたしは苦手でした」

「と、言うのは?」

「女性を見る目が……なんか…」

「皆にそうだったんですか?」

「あたしが気にしすぎなのかもしれないですけど……特にあの人に対する目線が何というか…」


 優花が目を向けた先には、栗本と柳下が思わずおっ、と声をあげるくらいに美しい女性がいた。

 青色のシャツが似合う爽やかな雰囲気、高い鼻梁にモデルみたいな小顔、7頭身のプロポーションは出ている所は出て、引き締まる所は引き締まっている。

 胸元にぶら提げているカードには、市民税課、鹿原円かはらまどかと書いてある。


「まどか……?」


 柳下は何か考える時には、金田一耕助みたく頭をばりばり掻く癖がある。あ~と小さく呟きながら立ち上がった。


「刑事さん?」

「あ、蓮井さん、協力ありがとうございました。すいませんが、あの方を呼んで戴いてもよろしいですか?」

 

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