第2話
「しょうがないッスねえ。とりあえず、新傭兵ゾーンの町に行ってみるッス? あそこの
トッシェがそう提案するのだが、ネーネがあからさまに嫌そうな顔をして
「ええー? あそこって、確かに新規プレイヤーも多いけど、それ以上に現行プレイヤーが、うちの国にこないかって、しつこいのよねー。わたしは食料を買うお金を
ネーネの言いは、さもありなん。彼女の言う通り、新傭兵ゾーンの
それでもフランスはクソなのデスワ! あんな国に行ったら、貴女のようなキレイな心の持ち主が3日で汚れきってしまうのデスワ! せめてイングランドと同盟を結んでいる国にすべきデスワ! と、特に金髪縦髪2本ロールが司祭服の上からでもわかるほどの大きな胸を揺らして、力説してきて、うんざりとなってしまったネーネであった。
「わたし、出来るなら、もうあの町の
「ん……? なんかどこかで見たたことがあるような、ないような?」
「まさかッスけど、あいつ、新傭兵ゾーンに来ているんッスか? 仮にもイングランド陣営の三大
ナリッサとトッシェがまさかなあ? と言い合い、他人のそら似だろうということで落ち着くのであった。しかし、
日曜日の午後3時半と言えば、現行プレイヤーたちがボスNPCを狩りに行っている真っ最中だ。
もちろん、トッシェたちの
新婚の2人の邪魔をするのも悪いッスねとトッシェたちは思い、ネーネと合流を果たしたのだが、早速、手詰まり状態に陥ったのであった。
「どこかに死にかけの新規プレイヤーが居ないッスかねえ? そしたら、助けたとついでに、俺っちたちの
「ん……。とりあえず、四大天使が居る場所に行ってみる? もしかしたら、
「まっさかー? だって、クエストを受けるためのNPCが口酸っぱく、
ネーネは四大天使クエストをNPC・サタンから受諾する際に、そのNPC・サタンに口酸っぱく、
そんな四大天使にソロで挑むなんて、控えめに言ってアホとしか言いようがない人物が果たして居るのかどうか? と訝しむネーネであったが、トッシェとナリッサがそんなネーネの心配も余所に、四大天使のひとり・ラファエルの元へとやってきたのであった。
四大天使は新傭兵ゾーンの東西南北の端にそれぞれ1体ずつ配置されていた。ラファエルは北の端の山の麓の1本の大樹の側に立たずんでいた。
そして、そのラファエルの足元にはひとりの傭兵が倒れていたのである。
「あー。やっぱり居たッスね。四大天使にひとりで挑むアホが。やっぱり、【地獄の門】を無くしたのは運営の失敗だと思うんッスよ」
「ん……。予定通りと言えば、予定通りだね。これであそこに倒れているのが回復職の卵だったら、嬉しい限りなんだけど」
新傭兵ゾーンに入り込んだ現行プレイヤーは初級職に落とされ、さらにはキャラのステータスもLv25程度に設定される。そのため、トッシェは盾職
「あのヒト、アホか何かなのー? だって、散々、
「まあ、そんなに言ってやるなッス。昔は【地獄の門】にソロで挑むアホなんて山ほどいたんッスから。だから、今の時代でも四大天使相手に同じことをする奴が居ると思って、ここに来てみたんッス」
へーーー。ノブレスオブリージュ・オンラインって、MMO・RPGなのにソロでプレイするヒトが居るって、お兄ちゃんからは聞いていたけど、まさか、本当に居るなんて思ってなかったなー? と悪い意味で感心するネーネである。
「とりあえず、あいつを助けてやるッスかね。後々、ネーネの
「えーーー!? あたし、NPCの説明をちゃんと聞かないヒトと
「ん……。家電製品とかでも、説明書を読まないタイプかもしれないね。でも、そんなの気にしてたら、
ナリッサさんって、心が広いのねー。でも、わたしは何だか嫌なんだけど……。でも、ここで贅沢を言っていたら、
ネーネ一向はラファエルの傍らで倒れている男性に近づく。すると、その男性はむっくりと
「くっ。なんてゲームなんだぜ……。今まではソロで全部倒せてきたっていうのに、こんなところにラスボスクラスを配置するなんて、ノブレスオブリージュ・オンラインの運営は鬼畜生なんだぜっ!」
何か、アホなことを言っているので、見なかったことにして帰りたくなるネーネである。だが、そんなネーネの考えも無視して、トッシェがその男に話しかけるのであった。
「おッス。おッス。災難だったッスね。四大天使はこの新傭兵ゾーンでは最強ボスNPCッスからね。どうッスか? もし、あんたが回復職だったら、俺っちたちと、このボスNPCを攻略するッスか?」
そんな都合の良い展開なんてあるわけないでしょ……。アタッカー職が自分を顧みずに
「あーははっ! いやあ、随伴NPCを伴って、ここまでこれたモノだから、ついつい、四大天使なんて雑魚だろうと舐めてかかったのが失敗だったんだぜ。俺様の名はケージ=マグナってんだ。職業は回復職の求道者だが、行く行くは【
眼の前の
「おっ、こいつはなかなかの傾奇モノッスね。回復職でありながらサブアタッカーを目指すなんて、気が狂っているとしか思えないッス。まるでデンカさんみたいに狂っているッス!」
「ん……。盾職の鍛冶屋でありながら、腕力鍛冶屋を目指しているトッシェと相性が良さそうだね。こんにちわ、ケージさん。僕の名前はナリッサ=モンテスキューだよ? 気軽にナリッサって呼んでね?」
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