第16話

 興奮冷めやらぬUFO目撃から2日が過ぎた。


 もちろんナオは学校の友達に自分の見たものをそのまま伝えたし、その時の感情、興奮を出来るだけ詳細に話して回った。


 が、


 もちろん周りはナオの話しを信じようとはせずに、バカバカしいと笑った。


 とはいっても、全ての人がナオの話しを信じていない訳でもない。ナオと同じくUFOを信じてる派の連中からすれば、ナオの話しはかなり現実的で、信憑性が非常に高く、実に理に適っているらしくナオを中心に据えたUFO調査団が結成される事になった。


 また、その事に興奮した信じてる派の数人が『とりあえずTV局に連絡だ!』や『校長……いや、総理大臣に知らせろっ!』など騒ぎ出したので、UFOの噂は瞬く間に隣のクラスを飛び越え、学校全体にまで行き渡った。その結果、UFOはいる派といない派の抗争が始まり、どうにも事態の収拾がつかなくなってしまい海多中学校は大混乱となった。


 その後、素早く状況を把握し鎮静化させる事に成功した教師連中は、流れるようにスムーズな動きでターゲットを首謀者と他数名の生徒に絞り、校内放送で怒鳴りつけるような声で自首をするよう促した。


 大混乱の後の静けさが広がる廊下を、顔を青くしたナオと他数名の生徒が決して走らず、限りなく急ぎ足で職員室に向かう姿が数多くの生徒に目撃された。


 また、放課後3時間正座をさせられたまま漢字と英語の書き写しや反省文までやらされた事は全校生徒周知の事実であり、夏休み直前の悪夢として後世へ語り継がれる事となる。


 刑期を終えて職員室から出所するころには、校舎内に生徒の姿はまったく見当たらず、静まり返った校舎が変に新鮮に感じられた。


 階段を駆け上がり誰もいない教室に戻って、自分のカバンをそそくさと手に取り校門前まで走った。


 校門前にて共に刑期を終えた連中に別れを告げてナオは1人、家に向かって歩き出した。


 少し歩くと、あの公園が見えてきて自然と足が止まった。


 居残りをさせられた後なので、もちろん誰もいない。


 あの子もーーーーいない。


 長時間の正座で足にきていたのか、ナオはふらふらとブランコに歩み寄り腰掛けた。


 わずかに暗くなりだした夏の空には濃い青が広がって、ところどころ濃い白が風で流されて、激しい川の流れのように見える。


 空は本当に不思議だと思う。


 いつ見ても、何回見ても同じ空がない。

 

 いつも違う表情だ。


 ナオは7月の公園で1人、空を眺め続けた。


 

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