第15話

 可愛いかった。


 なんだかソフトクリームや綿菓子を初めて見て、初めて食べたみたいなリアクションでまるで小さな子供みたいな感じだった。


 またも、あの日の事を思い出そうとして今はそれどころではないと自分に言い聞かせる。


 ナオは綿菓子入道雲から視線をきって、UFOを探す。


 心配をよそにUFOは先ほどまでとほぼ同じ場所で、楽しそうにグルグル回っていた。


 ナオが安心したのも束の間、UFOはピタッと回るのを止めてまるで今気が付いたと言わんばかりに綿菓子入道雲の方へゆっくりと動きだした。


 ぐんぐんスピードを上げ綿菓子入道雲のど真ん中に突っ込んだ。


 約1秒後、反対側から飛び出してまたしても、ゆっくりと飛行しだした。


 そしてナオは不思議に思う。夏の空で雲と戯れるように飛ぶUFOを見て、自分はなぜ何度もあの日の、あの子の事を思い出してしまうのか。


 雲が綿菓子に見えるから?


 空があの日の遊園地そのものだから?


 分からない。


 納得のいく答えが出ないナオの視界に、更なる驚きの光景が広がる。


 黒いUFOのやや後方を追うように飛ぶ、白く光る6つの物体。


「ーーーー白い、UFO?」


 白いUFOは6つ全てが突如として光り出したかと思うと、周辺を包むように一瞬大きく光った。


 少しして、


 光がおさまった後、白いUFOは変わらず6つキレイに並んで飛んでいたが、先ほどまでいた黒いUFOの姿が見当たらない。


 そして、並んで飛ぶ白いUFOの左右2機づつが、何度も直角に曲がりながら有り得ない速度で飛び去った。


 少し遅れて、中央に位置していた2機がだんだん半透明になっていき、色が消えたのか、存在が消えたのかは分からないが、肉眼では捉えられなくなった。


 そうなってしまうと空はいつもの、当たり前の空へと帰り、意識は一気に現実へと引き戻された。


「……攻撃……された?」


 白いUFOの放った光が、前を飛ぶ黒いUFOを攻撃した。ナオにはそう思えた。


 目の前で繰り広げられた常識では考えられない光景と、説明がつかない結末にナオは興奮と困惑を隠せずにブランコへと座り込む。


 ナオの重みで鎖がギリリとなった。


 ナオは視線を斜め下に落とし、隣のブランコを見た。


 あの子が座っていたブランコだ。


 誰かを待っているように静かに、微かに風で揺れている。



 そんな寂しげなブランコの座面には、一匹のセミの死骸が横たわっていた。

 

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