そして一夜明けて、あくる朝。


「おはよー」


 あくる朝、2人はどちらからともなく声をかけて目覚めた。

 そして由真は伸びをしながらうっとりと言った。


「あ〜、いい夢見た!麻友があんなこと言うから、夢に『さっちん』が出てきたよ」


「我がクラスのアイドル、押しも押されぬイケメンの『さっちん』?マジ!?すごいじゃん」


「しかも、その『さっちん』と!キスしちゃった!」


キャッと顔を隠す由真の仕草は、恋をする乙女そのものだ。


「正夢になるといいね」


ニコニコしながら麻友も言った。


「実はね、私も夢を見たの」


「そうなんだ。どんな夢」


「うーんとね、卵を割ったら黄身が双子だった」


途端に由真は両手でお腹をおさえ、身を折るようにして大笑いした。


「なにそれ。ウケる!!」


「あー、いい天気!」


 麻友は、カーテンを開け、ついでに窓も全開にした。


途端、朝日が部屋いっぱいに降り注ぐ。


「そういえば今日はバイトなんでしょ。時間大丈夫?」


「ああ、午後イチからだから、今日はゆっくりしていっていい?も少しこの気分に浸っていたい」


「そっか、じゃあ朝ごはん作るから食べてゆきなよ。今日はコンチネンタル風にしよう。由真はゆっくり寝ていて」


 由真は溢れんばかりの朝日の中で再びマットレスに体を横たえた。


(まだ感触が残っている。キスなんて今まで誰ともしたことないのに)


目を閉じてうっとりしていたその時、麻友の、悲鳴ともつかない嬌声が耳に飛び込んで来た。


(つづく)

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