Love so NGライフ

 念願叶って、ついにユメの彼女になった翌日、アタシ達は並んで登校していた。


 もっとも付き合う前から、登校時はいつも一緒だったんだけどね。けど今日のアタシは少しだけ気合が入っている。なにしろ彼女になってからの初登校なのだ。丁寧に髪を整えて、香りつきのリップもちょっとだけ塗ってきた。


 まあ、これくらい今時の女子なら普通にやっているんだけどね。それでもユメは会うなり、「いつもより可愛いよ」って言ってくれた。

 その一言でとても幸せな気分になってしまったのだから、我ながらお手軽だとは思う。まあいいか、嬉しけりゃ何でも。


「そういやユメ、聞いてもいい?」

「何?」

「ユメがなかなか告白してこなかったのって、アタシが恋愛に興味が無いって思ってたからなんだよね。それって、小学生の夏休みの時に……」

「恋だの愛だのは専門外って言ってたよね。それがずっと引っかかってた」


 やっぱり。と言う事はあの時妙な意地を張らずに素直になっていたら、十年も片思いを引きずることは無かったってことか。おっと、片思いじゃなくて両片思いか。そのせいでユメにまで苦労をかけてしまったのかと思うと、ちょっとショックだ。

 がっくりと肩を落とすアタシ。だけどユメは、そんなアタシの頭をポンと撫でる。


「別に気にしなくていいんじゃないの?俺もハナが素直じゃ無いのには、もう慣れっこだし」

「それはフォローしてるつもり?」

「たぶん。でも、本当に気にすることは無いから。確かに遠回りしちゃったけど、別に嫌だなんて思ってないし。ハナはそうじゃ無かったの?」


 そりゃ、アタシも今まで過ごしてきた毎日を、嫌だなんて思ったりはしない。素直になれなくて、モヤモヤして。だけどそんな日々の中でも、楽しい事はちゃんとあったわけだし。


「色々と間違いだらけだったかもしれないけど、それでも良いんじゃないの?俺はそんな毎日も、割と好きだから」


 そりゃアタシだって……どんなに間違っても失敗しても、ユメが隣にいてくれるのなら、それで良いって思える。だってアタシは、ユメの事が好きだから。


「あ、そうだユメ」

「何?」

「好き」

「……は?」


 あっけにとられたように、信じられないといった様子でアタシを見るユメ。何なのその反応?


「『は?』じゃないでしょ。よく考えたら、まだアタシからは好きだって言って無かったから、せっかく言ってあげたのに」

「だからって……こんな脈絡も無しに言う?」

「えっ、また間違えちゃった?」


 どうしよう。もっと素直にならなきゃって思って動いたのに、どうやらやり方を間違えたよう。

 だけどユメは次の瞬間、おかしそうに笑う。


「いや、いいよ。最高だから。それとねハナ……」


 ユメはそっと耳元に口を近づけ、言った。


「俺も、ハナの事好きだから」


 それは昨日聞いた!だけどそんな気持ちとは裏腹に、カッと顔が熱くなる。このー、人を弄んで―!


「……おはようご両人、朝からお熱いねえ」

「ラ、ララ!?」


 振り返るとそこにはいつの間にいたのか、ララの姿があり、ニヤニヤとあたし達を見つめていた。まさか今の……見られてた?


「驚いたよ。登校している二人を見て声をかけようと思ったら、まさか朝っぱらから耳キスなんてするとは……」

「はあっ!?違うから!好きだって言われただけだし!」


 そう叫んだ後、しまったと思って口を塞いだ。キスされたのを否定するのはいいけど、余計なことまで言ってしまった。


「ほう、好きと言われたわけか。それまたどうして急に?」


 ララ、絶対に分かって言ってるでしょ。溜息をつきながらユメに視線を送ると、向こうも諦めたような顔をしている。こうなったら仕方が無い。


「ララ、実はね……」

「俺達……」


 そうしてアタシ達は、ララに昨日あった事を話した。


 幼いころから夢描いていた、恋の花が咲いた話を……



                                完

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