第6話
庭の鬼灯が白い花を咲かせている。
その日、風呂から戻ると灯りが見えた。
嬉しい…
でも怖い…
いろんなものが、ない交ぜになり
涙で息ができない。
やっとの思いで戸口まで来たけれど
引き戸を開けられない。
あたしは決めきれなかった。
どうしても出来なかった。
今の私の姿を見たら
あの人は去ってしまうかもしれない。
あの人にとって、あたしは妾だ。
それ以上は求められていない。
体を震わせ
戸口で立ちすくんでいると
引き戸がスッと開いた。
あたしは怖くなって、きゅっと目を瞑った。
もう、隠しきれないほど
お腹が大きくなっていた。
「あっ」
抱き寄せられ、思わず声が漏れた。
片腕だけで強く抱きしめられたあたしは
あの人が泣いていることに
しばらく気がつかなかった。
「一緒に、江戸へ来てくれないか?」
声が出せるまでにしばらくかかった。
あいつは小さく「へぇ」と言った。
神にも仏にも顔向け出来ないのは解っている
罰なら地獄で受ける。
だから、今だけは…
完
火花を刹那散らせ─鬼灯─ ぴおに @piony
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
親父の説教部屋/ぴおに
★62 エッセイ・ノンフィクション 連載中 39話
思うことを書くノート/ぴおに
★18 エッセイ・ノンフィクション 連載中 65話
音楽祭/ぴおに
★19 エッセイ・ノンフィクション 連載中 64話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます