第三話 第一の関門。

 第一の関門。



「Wordで作成した原稿を、青空文庫フォーマットに変換せよ!!」



 前回のあらすじで、青空公式のリファレンス的なサイトを訪れたワタクシ。


 https://www.aozora.gr.jp/KOSAKU/MANU_MOKU.html


 そこには今までのウェブ屋としての常識を凌駕する驚きの光景があったわけです。


 もちろん皆様はご存じではないでしょうけれど、虚仮橋のリアルアバターはウェブ制作会社のマネジャーでありディレクター。ま、別に偉いとかでも何でもなく、要するに丁稚であり番頭なのですが、それはさておき、そんなワタクシの中の常識とは外れた記号を使わないと、青空文庫のフォーマットにはならないようなのです。インターネットで使ういわゆる「HTML」だのという書式では、すべからく半角英数記号文字を使って記述するのですが……。



 へ?


 全部全角で書くの?


 あと、この説明口調のコメント文みたいなのが、HTMLでいうところのタグなの?



 これはちょっとビックリ。

 まー慣れてしまえばいいわけですが、身体が明らかに拒絶反応を起こしとる。


 まあ、具体的に書かないと読んでる方も分からないので、虚仮橋がWord原稿を青空文庫フォーマットに変えた際に使用したものを列挙し、虚仮橋なりの解説をしてみましょう。




・一行目にタイトルを書き、二行目には著者名を書く


 これだけで勝手にタイトルとして認識され、いい感じの位置に配置されるようです。また、著者名も勝手に下詰めされます。ただ、タイトルと一列で縦に並べるのは無理そう。まあこれは、Kindle端末の画面サイズもあるんで仕方ないというか、これがベストなんでしょう。




・文章をセンタリングしたいのであれば、[#ページの左右中央]と書く


 これが宣言で、正確には『[#ページの左右中央]と書いて2行空け、文章を記述した後に再度二行空けて[#改ページ]』となります。注意点としては、この「二行空け」を忘れると絶対にセンタリングされない、ってこと。ただ何でかは知りませんが、このミスをやらかした状態でも出版された作品をKindleでサンプルDLしてみますと、キレイにセンタリングされていてワタクシの脳内は「?」となりました。




・文字位置(インデント)を調整する[#X字下げ][#地からX字上げ]


 リファレンスを見ると、通常の文頭の一文字下がりは全角スペースを入れろって書いてあります。なので、虚仮橋はそれ以外の見出しや最後の「完」などの表現で使いました。実は本編第二巻ですと、激しく文字位置を調整しないといけない場所があります。まだ印刷すらしていないので(実は作品はできています)まだ先の話とは言え、秋の例〇祭後にはデジタル化する予定なので……ううう、気が重い。ああ、ちなみに「X」の部分には任意の全角アラビア数字を記述します。




・見出しには[#「XXXXX」は中見出し]などを文末に付ける


 これをやると、Kindleなどの目次機能で自動的にリストアップされるようになります。見出しに大中小あるのであれば、タグの中身を随時そのように書き換えます。ただ、大中小の差がない作品の場合には「中見出し」で統一せい、と書かれています。




・ルビを付けたい単語の直後に《XXXXX》と読みを記述


 これでルビは付きます。ただ例えば『人形遣い《パペット・マスター》』と書いてしまうと、直前の文字である『い』に対してしか付きません。これは何故かと言うと、平仮名と漢字で文字種(?)が変わっているかららしい。ではこういう場合にはどうするかというと、ルビを反映したい場所まで『|人形遣い《パペット・マスター》』と全角縦線(Shift押しながら「¥」キーで打てます)で区切りを入れます。すると『人形遣い』全体に反映されます。同じように同一文字種の一部分にルビを振りたい時も同様です。『赤|薔薇《バラ》』とやれば『薔薇』だけにルビがふれます。このへんはカクヨムと似ていますね。




・傍点を付けたい文章の直後に[#「XXXXX」に丸傍点]と範囲を記述


 これで傍点が付きます。傍点と言うのは、目立たせたい文章の一文字ずつの右に点を打つ、アレですね。これも種類がありますが、虚仮橋は丸傍点しか使いませんので、興味がある方は調べるといいです(すぐ出てくると思いますし)。記述方法としては『イギリスならジンだな。イギリスジン、なんちゃって[#「なんちゃって」に丸傍点]』という具合で、これで『なんちゃって』に丸傍点がつきます。済みません、巨匠の文章引用しました。




・よく見るビックリマークとハテナマークが横に並んでるのは[#「XXXXX」は縦中横]


 ……頭悪い文章ですね。正確にはエクスクラメーション・マークとクエスチョン・マーク。感嘆符と疑問符でももちろん正解。ではこれを横に並べるには? という答えは『なんだって⁉[#「!?」は縦中横]』となります。ただ、ここで虚仮橋の抱えた解明できていない謎。プレビューでは無問題なのですが、実際にAmazonからサンプルDLすると、何故か上下さかさまの物が表示されてしまいます。半角記号で書いたせいでしょうか? しかし全角で書いたら、特に縮小もされずに横に並んでいるだけで使えませんでした。うーん……。




・特殊文字は使えない気がする


 タグとして使用されている『《(二重山括弧)』は文字としては使用できません。これを使ってしまっている虚仮橋は、置き換え用の文字コードで記述してみたのですが、プレビューすると何も表示されていない……。ちゃんとリファレンスに載っているのに、それを使っても表示されないとか「イミワカンナイ! ©真姫ちゃん」。だもんで試しに数学記号の方の『≪』を入れてみたところ、文字の見栄えとしては問題なかったので置き換えました。




・次の章へ行く際には[#改ページ]


 機能としてはWordのそれと同じです。




 ・書き終わったら[#本文終わり]。あとがきがあればこの後に


 書くことで特段の変化がある気がしませんでしたがお作法として。




 ざっとこんな具合。


 もちろん、挿絵を入れたり何だーかんだーと、本当はもっとやれることもあるんでしょうけれど、最低限こんだけやると虚仮橋的には納得できそうでした。うへえ、超量が多い……という方もいるでしょうけれど、一回やってしまえば大した分量じゃないことが分かると思います。


 Wordで全選択して秀丸エディタとかにコピペすると、ルビは半角小括弧『(』とか『)』で括られますから、まずはこの時点でこいつらを『《』とか『》』に置換してしまえばいいです。おっと、文中でこれらを使っている人であれば、先に『《』とか『》』を数学記号の方の『≪』とか『≫』に置き換えておきましょう。そうしないとあとでチェックする際に泣きます。


 で、次にルビ位置のチェック。前述の通りで、意図しない位置にルビが振られていたり、足りなかったりします。なので根気よく文字検索を使って調整。で、この過程において、傍点を使っている人は該当箇所がルビ扱いになっていることに気づくはずです。なので、こちらも発見次第タグ化していきます。


 これらが完了したら、冒頭に戻ってタイトル調整。虚仮橋は中央に寄せたいのでそのように。次ページの注意書きも重要なので、同じように中央寄せ。で、上から順に見出しをタグ化。虚仮橋は一パターンの見出しのみなので中見出しですね。



 で。

 じゃん、完成。



 とか言ってますが、この機会に余計な校正までするハメになって意外と時間を喰います。


 蛇足ですが、修正して再度出版中の本をアップデートする際には「版数」をカウントアップさせましょう。当たり前のことですが、買う側からすれば、これが修正版なのか間違ったままのものなのか判断がつきませんので、それを知らしめるための「版数」は重要な要素です。



 思いの他、長文になっちゃったので、次回に続きます。

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