書籍化記念 魔我羅の立て直し9

 

 背格好で身バレする可能性が判明したため、帰り道はコソコソと帰った。


 チャラ傭兵ベイルにそれとなく聞いてみたところ、やはり公衆浴場は生々しい出会いの場と化しているらしい。それだけではなく湯女ゆめによる性的なサービスも可能だとか。どんな複合施設やねん。


 この街の人達は性的行為に大らかだ。一応、浮気はダメらしいが。


 そもそも浮気の定義とは……。


 貴族育ちのエメリーヌは妾を増やすのはオッケーだが、外でテキトーに致すのはアウトみたいな価値観らしい。でも街の連中は体の相性の方が先な雰囲気だ。


 この辺の線引きはよく分からないので、余計なことはしないように気を付けよう。ちょっとだけ混浴に興味があっただけだ。


 あんな暗くて熱苦しく、剥き出しの肉体が迫ってくる魔窟みたいな所だとは思わなかったが……。


「殿。お務めお疲れ様でござる」


「……レインか。公衆浴場は盛況なようだな」


「内部は街の女衆が切り盛りしているでござる。治安も今のところ問題ないでござるな」


「そうか。街の立て直しも順調そうだな」


「はっ。殿の御力で順調でござる」


 最近なんかしたっけな……。まぁいいか。


 ベイルはレインと入れ替わりにさっさと退散していった。奴がお伴の意味はあったんだろうか。




 妙に疲れた身体を引きずるように城の居室へと戻ると、サーラちゃんがベッドで丸くなって寝ていた。


 帰るのを待っていてくれたんだろうか?


 静かに着替えて、そっと隣に横になる。


 ここしばらくは、エメリーヌの子供が生まれたのもあり、1人寂しく寝ることが多かったから気を使ってくれたのかもしれない。


 自分が大きな子供に思えて気恥ずかしくなる。そんな気分を誤魔化すようにサーラちゃんの頭を撫でると、薄っすらと鳶色の瞳が開いた。


「ん、シューイチ。おかえり」


「ただいま」


「……サーラもいるから、ね?」


「……そうだな」


 言ってから何がそうなんだと思いつつも、再び目を閉じて抱きついてきたサーラちゃんを撫でながら、俺も目を閉じた。

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