書籍化記念 魔我羅の立て直し6
俺の魔素殻訓練はいまいち進展のないまま一か月が過ぎ、エメリーヌは無事にさっくりと出産した。
やや予定日より早く小さめではあったが女の子だ。
しかし、全然会わせてもらえない。
エメリーヌ達女衆は部屋に籠りきりでほとんど出てこなく、入出制限もかけているためだ。
ばい菌や病気などの知識もなく、根本から衛生観念が異なるが先人の知恵として生まれた風習なのだろう。
5歳くらいまでは、なるべく人に会わせないように育てるのが習わしなようだ。
俺は一人、暇を持て余していた。
こそこそと目立たぬ格好をして、できたばかりの公衆浴場の見学に向かう。
それほど水資源が豊富ではないこの街の公衆浴場は、湯船はなく蒸気浴、つまりスチームサウナのみ。かけ湯すらなく水浴びだそうだ。
そして……この公衆浴場は混浴の上、背中を流してくれる
マナ循環は早めに停止しておこう。
「……殿!」
「はぁおう!」
後ろに
「いかがなされたでござる」
「なに。公衆浴場が繁盛していると聞いてな。実際の運営状態を密かに客として見学したいのだ」
俺の長文の言い訳に、レインの眉がぴくりと反応する。
「……警備の者はいかがするでござるか?」
「町人に扮すれば問題ないだろう。周辺警備を頼む」
「……ははっ。しかし、しばしお待ちを。
レインはマナ循環してないとやや反抗的だ。
「わかった」
夕闇に溶けていく薄気味悪い隠形を横目にしつつ、お伴連れてたら身バレしそうだなとつらつら考えていたら、男をお姫様だっこしたレインが空から降ってきた。
「伴の者を連れてきたでござる」
「うおっ!⋯⋯キングっ!? ちぃーっス!」
おお、いつぞやのかませ犬チンピラ君じゃないか。顔が割れていても連れが
「伴を頼む」
「⋯⋯了解っス」
こうして我々秘境探索隊は、新たな冒険の地へと赴くことになったのだった。
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