書籍化記念 魔我羅の立て直し5

 

 俺のネチャネチャ魔素殻を使ったダイラタント芸の遍歴はこうだ。


 ダイラタントシールド⋯⋯衝撃を与えると固まり、衝撃を吸収してくれる性質を利用したシールド。しかし、重力に従って薄く垂れ下がり、そのうち霧散するため役に立たず。


 ダイラタント漁⋯⋯水には流されない半固体なので川に大量に流し込んで衝撃を与え固めると魚が獲れる。でも、実は川底の石や色々な物まで大量に取れてしまい環境に優しくない。


 ダイラタント結界⋯⋯密室であれば、床に流し続けると冠水状態になる。流れが不自然になると知覚できるため不審者侵入を検知できる。ただし、睡眠中は役に立たない。



 半固体で重く、流動体の性質が強い。


 サーラちゃんの魔素殻はどちらかというと硬質ゴムの膜だ。風船のように膨らませたり萎んだりの固定動作だ。


 俺の魔素殻はさながらスライムと言ったところか。


 小さめの傷の出血を止めるだけならサーラちゃんでもできそうだが、俺のなら深い所まで浸透させることができそうだ。例え、子宮内膜の出血だろうが満たしてしまえば何とかなる⋯⋯気がする。


 ただ、それで治るのかというと別問題な気がするが、まずは止血。輸血のないこの世界で出血死を食い止める方法を編み出したい。


 寝ないで魔素殻を放出し続けるのは現実的ではないので、破れた血管に固めたダイラタント結石なるものを詰めるイメージだ。


 課題は二つ。


 血管に詰めるように操作することと、衝撃なしで固める方法。


 操作は少しずつ慣らせばできそうな気がする。何となくでも知覚できているのだし。


 後は⋯⋯濃いぃの作ったら固まるような気がするよね?


 またやっちゃいました?的な魔石できちゃうやつ。



 ふんばったよね。


 もう俺、ふんばって産みの苦しみを味わってるんじゃないかってくらいふんばって魔素殻を濃縮してみたよね。




 できました。


 軽石みたいにスカスカした小さな白い石。ちょっとチクチクと刺々しい。


 これー。あれだなー。


 水分止まんねーなー。余計、血管破れそうだしー。



 ⋯⋯課題の解決には時間がかかりそうだった。いつもの事だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る