書籍化記念 魔我羅の立て直し4

 

 サーラちゃんと連れ立って、エメリーヌの居室を訪れた。


 通称「大奥」と呼ばれる妻達の執務室だ。ディートもメイド服で控えている。


「あなた様、ご足労痛み入ります」


「気にするな。体調はどうだ?」


「はい。お腹の子も息災でございます」


「そうか」


 お腹を撫で回すエメリーヌは慈悲深い微笑みを浮かべていた。どこの大地母神やねんと思ってしまう彼女だが夜モードだと普通に蹂躙してくるんだぜ。最近はご無沙汰だけど。


 この世界の女性は、全般的に強かでタフだ。


 4人に1人レベルで人口が減ったこの街でも元気なのはおばちゃん連中だ。流行り病でも似たような状況になると笑い飛ばしていた。不甲斐ないのは我ら男ばかりだ。


「父上より書状が届きましてございます」


「レインから大まかには聞いている。元気そうか?」


「はい。マックス共々、参上してくれるそうでございます」


「そうか。それは良かった。マックスもエメリーヌを心配してるのだろう?」


「もう妻を娶ってもおかしくない年頃ですのにあの子ときたら⋯⋯」


 彼、理解ある系マザコンだもね。お手紙の内容が思い浮かぶようだ。


「もてなす準備をせねばな。新しくなった魔我羅を見せてやろう」


「はい。ありがとう存じます」



 エメリーヌのお腹を撫で回し、ついでに何故か寄ってきたサーラちゃんとディートの頭も撫で回し、エメリーヌの頭も撫でてから退出した。


 字面だけ見るとハーレム感凄いが、実際はペット感だ。




 さて、この世界の出産事情だ。


 産婦人科の病院など当たり前に無い。助産師というか歴戦の産婆がやってきて赤子を取り上げる方式だ。立ったまま紐に捕まって産むスタイルらしい。


 当然、母子共々死亡率も高い。大出血でも起きたら処置のしようがないのだ。


 俺は思い付いた。


 ダイラタントシールドから始まった、いまいち役に立たなかった俺の魔素殻芸。


 でも、サーラちゃんは魔具に影響を受けた魔素殻を持っている。



 後天的に影響を受けた魔素殻の形に固定されるのではないか?


 そんな仮説だ。


 ⋯⋯なら、俺は?


 この世界に魔法があると思い込んでいた俺は何を想像した?



 水に流されず、水より比重が大きく、ドロドロとして衝撃を与えると固まる。


 既に形質として表れている俺のダイラタント魔素殻は何の影響を受けた?



 ここから導かれるのは、怪我をしたらヤベェ。出血したらヤベェ。止めないとヤベェ。カサブタヤベェ。回復魔法ないとヤベェ。じゃないのか?


 だとしても今のままではダメだ。検証し、技術として昇華せねば。



 強い想いを胸に抱えつつ、内心ようやく役に立つかもとウキウキしながら足取り軽く居室に戻った。そう、実験だ!



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