第63話 義父参上


帝国兵の使者が馬に乗ってやってきた。降伏勧告だろう。


帝国兵自体は目視できる距離に威嚇する様に布陣している。1km先くらいだろうか。魔術交戦距離内だ。


魔素殻で魔術を防げるサーラちゃんと待機だ。石を持って迎撃態勢のブリスロック隊も城壁の上で散会して待機している。



感知による警戒はしたままだがサーラちゃんと手を繋いで散歩状態だ。前回程の緊張感はない。


「サーラはやってみたい事はないか?」


「サーラは⋯⋯エメリとディーと同じあいしょうをやりたい」


「⋯⋯そうか」


ディーってディートの事かな?ディートを娶った覚えはないんだけど⋯⋯。愛妾って意味分かってるんだろうか?とりあえず話に触れるのはやめておこう。


「殿。エメリーヌ様がお呼びでござる」

レインが空から降ってきた。何かあったらしいがナイスタイミングだ。


「分かった。向かおう」



向かった応接間にはガロスとエメリーヌ、そして険しい顔をした元王国紋章官がいた。帝国の使者は彼だったか。


「その節は世話になった。魔我羅殿。此度は帝国貴族として降伏勧告に参った」


「久しいな。だが降伏勧告には応じない。戦うのであれば全滅を覚悟するといい」


「勿論、退かせてもらおう。それとは別件で娘と孫の事で礼を言いたくてな」


あ、退くんだ。

娘?孫?はて⋯⋯?



「あなた様⋯⋯私の父上ですわ」


え?エメリーヌの親父さんなの?お義父さんじゃん!王都の貧乏貴族とか言ってたお義父さん?紋章官やってたの?

降って湧いた事実関係に緊張感が迫り上がる。こういう時って何話せばいいんだ?


「エメリーヌも孫のマクシミリアンも保護してくれて礼を言う。ダンダムでは娘を不憫に思っていたがここでは幸せそうだ。末永く可愛がってやって欲しい」


「⋯⋯も、勿論だ」


「それと相談なのだがマクシミリアンを後継に貰えないだろうか?帝国で家を継げる地位になったのだが後継がいないのだ。ここ魔我羅との友好にも繋がるのだが」


「⋯⋯エメリーヌ?」


「はい。良いお話かと存じます。マックスにとっても魔我羅にとっても」


「しかし、亜人種との共存は可能なのか?」


「人族原理主義の聖教は修道士が敗れた事で紛糾している。亜人種討伐に誰も名乗りを上げない程にはな。今ならば講和を結ぶ事に誰も反対すまい」


思った以上にダメージを与えていた様だ。修道士頼みの戦いに慣れ過ぎていたのだろう。あちらの攻撃は無効なのに一撃で殲滅だもんね⋯⋯。


こちらも元王国貴族とかがやって来なくなって都合が良い。しかし講和か⋯⋯。



「⋯⋯帝国は魔我羅を国として認めるのか?」


「魔我羅は聖教がある限り帝国に臣従はしまい。しかし十分過ぎる武威は示した。こうして城も構えている。帝国も認めざるを得ないだろう」


「分かった。話を進めてくれ」


「有り難い。では私はこれで失礼する。兵も退かせてもらおう」


不機嫌顔が地顔らしいお義父さんは去って行き、展開していた帝国兵も撤収して行った。



何だか肩透かしだがどうやら魔我羅は国になっちゃうみたいだ。


⋯⋯名前変えない?

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