第41話 千客万来
エルフに現地語教えるにしても俺以外にダリ位しか現地語話せる人がいない。訛っているエルフ⋯⋯アリかナシかでいうとアリかもしれん。サーラちゃんもお話できる様にならないもんか⋯⋯。
そんなこんなを考えながら村に戻ると来客があった。
王都からの紋章官が、休憩用の小屋で不機嫌を隠さず待っていたのだがこんな開拓村に応接用の部屋や建物などないのは勘弁して欲しい。
「こんな辺鄙なところまで、どう言ったご用件で?」
「マガラ士爵、貴族章の受け渡しで参った」
封蝋用の印鑑の様なものと紋章の入った身分証を受け取った。紋章デザインは勝手に決められるシステムの様だ。
「そしてこれが紋章帳だ。毎年更新で今後は金貨1枚で購入してもらう事になる。今回の貴族章と紋章帳は不手際に対する王の温情と心に留めおけ」
王国内の全貴族の紋章が記録されているらしいが金貨1枚は高い。貴族章も本来は金貨10枚と目玉が飛び出る程高い。押し売りお断りって言いたい所だが、きっと兵隊さんがやってくるので受け入れた。無料だったし。
紋章官は転移後に奴隷に落とされたり、不当な労役課されたりとかの不手際に対する遺憾の意と貴族の注意事項などを説明して、ダンダムに向けて村を去っていった。2頭立てとか随分と立派な馬車だなぁ⋯⋯。
塩は王室の専売。士爵だと領地の村は1つまで。俺覚えた。今回王都に拉致られなかっただけ良かったと思おう。
紋章帳ってやっぱり王都に買いに行かなきゃダメなんかなぁ⋯⋯と来年の事を考えていたら、入れ替わりで別の荷車を引いた集団がやってきた。
あれ?ガロスと団長に傭兵団の人達だ。
「どうしたんだ?お揃いで」
「話が出来る場所はあるか?後しばらく厄介になりたい」
団長がいつになくシリアスだ。何かあったな。
「⋯⋯分かった。こっちだ」
先程も会談に使った休憩用の小屋へ案内する。
「⋯⋯何があった?」
身を乗り出したガロスが口火を切る。
「まずは⋯⋯騎士団がまたダンジョンで壊滅して魔術士の騎士団長も死んだ。こりゃ不味いってんで、連絡役と一緒にダンジョン街のウチの連中も一度ダンダムに引き上げたのさ」
「魔石の貿易をあてにしていたダンダム領主がトチ狂って住民全員に重税を掛けると公布したものだから兵役に就いてた連中が農民を巻き込んで猛反発だ。今の弱体化した騎士団じゃまず止められん。ゾッドの連中もほとんどが住民側に付いた」
腕を組み目を瞑ったままの団長が苦しげに続いた。
「それでマガラ村に避難か」
「そういうこった。ああいう手合いは行き着くとこまで行っちまうからなぁ。勝った所で今度は内部でドロドロの権力抗争よ」
「傀儡ででも貴族を立てていればまだ理屈は通るが⋯⋯あれでは勝っても負けても逆賊として討伐対象だろう」
重い沈黙が場を支配する。
「⋯⋯ガロス。蟻の巣の間引きはどうなってる?」
「騎士団が傭兵を押し退けて蟻の巣を担当しやがったからな。今頃、卵が増えてるぜ」
「ダンジョン街の人達は?」
「耳が早い商人達は逃げ出してたな」
うーむ。先にダンジョンの対処かな⋯⋯。
蟻が溢れたらダンダムの城壁も普通に越えてきて壊滅してしまう。
避難民もこれから増えそうだ。
「団長はこれからどうする?」
「下手に武力を持っていると厄介事に巻き込まれるからな。出来ればダンダムが落ち着くまでは世話になりたい」
「働いてもらうがいいか?」
「勿論だ」
「日が沈む。まずは寝る場所を用意しよう。ダリ!ゴブリン達に滞在者の事を通告してくれ」
「はいっだす!」
ダリもすっかり居なくてはならない副官ポジションが板に付いてきた。ヒロイン扱いはしない、絶対にだ。
傭兵団は総勢28名だった。木材の利益で食料の備蓄をしていたし、ある程度持参してくれたので暫くは問題はない。
簡易な寝床を皆で急ぎ拵え、懇親も含めて焚火を囲み飯を食う。
「ガロス。ゴブリン達と仲良くできそうか?」
「まぁ何とかならぁな。片腕のゴブリンなら話通じるんだろう?心配すんなキング」
「⋯⋯頼むぞ」
腰にくっ付いたままのサーラちゃんの頭を撫でながらお願いする。
むさいおっさんが増えた事で再びスキンシップ強化期間がやってきてしまった。大人の男に対する恐怖は簡単には抜けない様だ⋯⋯。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます