第40話 負の遺産
サーラちゃんをダリに任せ、空へと飛び立つ。
傍から見るとさぞかし不気味であろう立体機動も駆使し接敵を報せる狼煙へと飛んだ。この辺は手慣れてきた。左足の太ももだけが筋肉質になっているが仕方がない。
右手に石を握り締めながら森の上空を抜け、急制動を掛け狼煙の位置に降り立つ。
木々に阻まれ上からでは見えなかったがまだ戦いに至っておらず間に合った様だ。
平伏すゴブリンさん達、相対する勢力は⋯⋯10人ちょっとくらいか?何故かこちらも平伏している。
⋯⋯一体何が起きているんだ?
『もし?貴方様は迷い人では?』
な⋯⋯日本語だと⋯⋯。
『妾達は森人、貴方様方にはエルフと呼ばれるもの。敵対する気はないのじゃ〜』
『エルフだとっ?』
『そうなのじゃ〜。威圧を解いて欲しいのじゃ』
こちらの日本語を聞いて、蜂蜜色の髪と翡翠色の瞳のイケメンエルフが顔を上げて懇願してきた。
⋯⋯ちょっと待て。
『日本語を教えたのは迷い人?』
『そうなのじゃ。我が一族に伝わるのじゃ』
やや得意げにイケメンエルフが答える。
のじゃイケメンエルフに若干イラッとくるがそれ以上に先達の業の深さに身震いした。
気持ちは分からんでもない⋯⋯分からんでもないけどコレはあんまりではないか?
展開的に森でエルフはファンタジーで大いに結構だが、のじゃ男とかディテールが酷すぎやしないか?今回に限らずだけど。
しかも多分、のじゃロリ大好きパイセンが悪意なく仕組んだ罠だ⋯⋯。後の事考えようよ。あのイケメン、イケメンスマイルで妾とか言っちゃってるよ?
クソっ。パイセンなんて羨ましくなんかないんだからねっ!
とりあえずマナ循環を止めるとエルフ達の緊張感も若干薄まった気がした。
『ありがとうなのじゃ〜』
やり場の無いこの怒りとやるせなさはどうしたらよいのだろうか⋯⋯。
『のじゃは女キャラが使うもんだからとりあえずやめてもらっていいかな?後、妾も女が使うもんだから俺に変えてもらっていい?』
『のじゃはダメでござるか?』
『ござるキター!
おっと⋯⋯いや、何かほんと日本人の先達が申し訳ない。ごめんね。』
『謝って貰うことなどないのでござるよ。迷い人の方には恩しかござらん』
と、とりあえず話ができる相手で良かった。口調のせいでキャラ崩壊してて何か相手したくないけど。他人の壮大な黒歴史の重みがやべぇ。
聞くところによると三百年位前に虐げられていたエルフ達を迷い人パイセンが救い出し、人が居ない辺境のこの森に連れてきたらしい。
最近、馬魔獣が発生したので警戒を強化してた所に、うちのゴブリン偵察隊と鉢合わせし、睨み合いに発展したとの事。ゴブリンさんの言葉は分からないのでイケメンエルフの証言だけになるが状況的には合ってるだろう。兎にも角にも刃傷沙汰に及ぶ前で良かった。
迷い人が居るなら友好関係を築きたい、できれば恭順したい!との事だったのでまずはお友達からお願いしますと伝えた。
『ところで兄弟はいないの?お姉さんとか妹とか?』
『弟が5人いるでござる!』
そこは1人くらい妹いてもいいんじゃないかな?っていうか弟多いな!
俺の儚い想いはアッサリと打ち砕かれた。
『こちらの現地語解る人は?』
『この辺の国だとどうでござるかな?恐らく違う言語だと思うでござる』
えー面倒くさーい。
俺が通訳するの面倒くさーい。
『あっちに村を作ってるから現地語勉強してくれる人を派遣してくれないかな?出来れば女の子で』
『了解仕ったでござる。長と相談するでござるよ』
イケメンスマイルを残しイケメン達は森の中に去って行った。
⋯⋯疲れた。
ゴブリンさん達、一緒に村に帰ろう?
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