第38話 朝令暮改


早速、俺達はガロスで検索する為にダンダム傭兵団詰所へ向かう。




「ガロスは居るかい?」




「おぅ。閃撃の士爵様。首尾良くいったみたいだな。ガロスは俺と入れ替わりでダンジョン街だ」


団長が居て、サーラちゃんをチラ見しながらガロスの行方を教えてくれた。士爵になった事は公布されていたらしい。ガロスは副団長ポジションの様だ。




「丈夫な荷車が欲しいんだが。後はこういう穴を掘るヤツを」


剣先スコップを地面にお絵描きだ。




「荷車か⋯⋯何を積む予定だ?」




「木材を積めるやつが欲しい」




「木材屋に聞いた方が良いかもな。穴掘るやつは金物屋で聞いてみるといい」


⋯⋯やはりガロスより検索精度が低い気がする。




とりあえず諸々の御礼と定期的に蟻の巣退治しないと危険である事を伝えて詰所を後にした。


ちなみに蟻の巣退治ですげー儲かったらしい。




世話になってるから、ダンダム傭兵団には生き残って欲しい所だ。



◆◆◆◆◆



荷車と剣先スコップらしき物を購入し、食料なども買い込みサーラちゃんとダリ共々荷台に乗せて城塞都市ダンダムを後にした。




荷車を引くのは勿論俺。ダンダムを出たら左足低空飛行だ。




一応、奴隷市場も見てみたが逃亡するか女性陣を襲いそうな奴しかいなかったので諦めた。俺が不在の時でも村を任せられる人間なんて早々確保できない。人材難だ。ガロス引き抜きたい。




いっそのことダンダム傭兵団ごと手に入れられないだろうか。

でもアウトロー達を暴力による恐怖支配もなぁ⋯⋯。肌に合わないよなぁ。






半日ほどの荷車の旅。




最初は落ちない様にと強張ってた後ろの2人も慣れてきたのか周りの風景を楽しんでる余裕も見える。




やがて葦が生い茂り、懐かしい木の柵が見えてきた。




中の様子は柵ではっきりとは窺えないが建物は無事なんだろうか?






近付いて行くと、ワラワラと人影が増えていくのが柵の向こうに見えた。






⋯⋯ゴブリンさんだ。野良ゴブリンさんに開拓村が占拠されている。




15名程の木の槍などで武装したゴブリンさん達は既に臨戦態勢。




奴等の中心にいる体格の良いゴブリンさんは見覚えのある斧を担いだアックスゴブリンだ。




多勢に無勢。どないしよか。










「爆烈」


左腕を振り上げ、指差す様に振り下ろす。




マナによって生成された直径1メートル程の火球は村を飛び越し葦藪に着弾。爆音が地を揺るがし、爆風が村の木の柵を薙ぎ倒す。


巻き上げられた土砂が降り注ぎ、黒煙をもうもうと吐き出した。




サーラちゃんは背に庇えたが、隻腕ゴブリンのダリはバランスが悪いのかコロコロと転がっていった。




「⋯⋯ダリ!大丈夫か?」




「はいっ。流石は主様だすっ!」






「奴等に死にたくなくば服従しろと伝えてくれ」




「はいっ。奴等に、主様の偉大さを!知らしめてくるだすっ」








こうして圧倒的暴力を見せつける事で無血開城したマガラ村は、恐怖により住人を支配する事に成功する。








⋯⋯やがて周囲のゴブリン集落も傘下とし、住民を増やしていくこの村の正式名称は忘れ去られていき、ゴブリン村として親しまれる様になるのだった。



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