第37話 この世界で生きる
久々に熟睡でき、すっきり爽快な気分で目が覚めた。
何だか色々焦り過ぎていたのかもしれん。
うつ伏せで寝ていたサーラちゃんを揺り起こし、宿で朝食をとる。うん。しっかり食べて偉いぞ。
だがしかし、スキンシップ強化期間は終了してしまった様だ。少し寂しい。
追加で頼んだ朝食を車庫まで運び、ゴブリンのダリが食べている間に日課の下の世話だ。
壷運んで中身を穴掘って埋めるやつね。
井戸で手を洗い、車庫に戻るとサーラちゃんとダリは意外と仲良しになってた。ダリがサーラちゃんに話しかけてるだけだけども。
昨日ほど怯えが見えない。順応早いなー。やっぱり言葉が通じるって大事だよね。
「前にいた開拓村が俺の領地になった。買物をして向かおうと思う」
「流石、主様だぁ」
隻腕ゴブリンさんは買った当初からやたらと忠誠度高い気がする。何なんだろう。
サーラちゃんはちょっと困惑してる様に見える。控えめに頷いた。開拓村にもいい思い出ばかりじゃないもんなぁ。
とは言え、ダンダムに滞在していると金がかかり過ぎるし、何よりダンダム領主の手の内なのが気分良くないので、俺は自由の為そして食の為に闘う!マズローの欲求ピラミッドを駆け上るのだ!
日本人の現代知識チート(食)を今こそここに!
ダンジョン街もそうだったけどダンダムでもご馳走と言っても、精々干し肉とかの具が入った塩味の粥でしかないのだ。開拓村よりはマシではあるが満足できるレベルではない。
生きるとは食う事だ。食道楽を目指してみてもいいだろう。
⋯⋯日本にいた時は金を出せば大体解決できるが、金が無ければ何もできない世界に飽きてたのかも知れない。全てが金に見えるし空虚だった。自分の存在や努力ですら金で代替できるものでしかなかったのだから。
この世界は違う。
人は売ってたりするが情報は一瞬で世界を巡ったり、欲しい物をポチッたらすぐ届く世界ではない。この世界では欲しい物は金を積んでも手に入るとは限らない。情報や物流もロクにない。資本主義や、人の教育も含めた画一的な大量生産なんて概念もない。そして俺の代わりなんてのも検索しようが世界の何処にもいないのだ。
虚しかった大量生産大量消費で効率重視のファストライフと相反し、ITもロジスティクスもライフラインすらもなく非効率極まりないが充実感はある⋯⋯まさにスローライフ。
『ははっ⋯⋯解ってきたぞ。異世界テンプレの偉大さって奴が⋯⋯』
思わず日本語で呟いてしまった事にハッとしたが、2人は俺などそっちのけで地面にお絵描きして何やら話し合っていた。
まぁいいか。
俺の異世界テンプレ概念では、そのうちこのダンダムはスタンピートに遭う。第1候補はあの蟻だろう。それまでにマガラ村を開拓し、少なくとも自給自足は出来る自立した村にし防衛もしなければならない。
その為のはじめの一歩は⋯⋯。
丈夫な荷車と剣先スコップだ!
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