第31話 ボーナスステージ


魔具探索2日目、水を多目に持った俺は短槍を背負い、ショートソードを2本刺しダンジョンを闊歩していた。


昨日は、年も年なんできちんと休んだ。急いては事を仕損じる。



「⋯⋯しかし、人多いな」




お馬様と蜘蛛の討伐を聞いたのか、虫退治に勤しむ連中がいつにもまして増えていた。傭兵じゃない人もいるな。






邪魔なので走り抜ける事にしたら蜘蛛部屋まで1時間掛からず着いた。




「ア⋯⋯アンタが閃撃か!?」


待ち伏せしてたのに驚き顔だ。なんだコイツ。




「俺に用か?」


知らん顔が5人。ゾッド傭兵団の連中かな?




「いや何、単独だっつんで一緒に付いてってやろうかとな」




「不要だ。急ぐんでな。通してくれ」




「そ、そうか。じゃオレ達はテキトーにこの辺で狩るとするよ。邪魔して悪かったな」


邪魔くさ。ハイエナかな?


まぁ暗がりからおっさん出てきたら驚くよねー。俺、灯りつけない派なんで。




感知で妙な動きをしないか監視しつつ通り抜ける。






次の部屋からは相変わらずのモンスター天国。



⋯⋯やはり連中は付いてくる様なので魔物を残しておいてあげよう。




一部屋丸々飛び越して次の部屋へ向かう。




その後は何時も通りの殲滅作業をして3つ目の部屋なのだが、感知では3体しか居ない。虫よりは強い様だ。




開けてみると山羊だった。


山羊とお馬様の魔石の買取が同額なの?


もしかしてボーナスステージ?




1体目は掌底メテオでさっくり。


2体目は突進を避けて飛び蹴りで首折り。


3体目も掌底メテオで片がついた。




あー確かに魔石の大きさは同じくらいだ⋯⋯。


突進のプレッシャーから何からお馬様からは数段落ちなのに。⋯⋯美味しい。




ただのボーナスステージだった。次はボスかな?




この部屋の分岐はどっちがメインストリートか微妙だな⋯⋯。




とりあえず右から感知してくか。






⋯⋯右も左もボスでした。ボーナスは継続中?




右のボスは蟷螂。左のボスは女王蟻かな?大き過ぎて全容が見えない。


女王蟻って他の蟻見た事ないんだけどいきなり女王蟻なの?最奥感満載やん!




迷わず左に突入する。






⋯⋯何か納得した。他の蟻はこれからだったのね。




体育館数個分ほどのドーム型部屋の壁一面に卵や幼虫、繭が蠢いていた。万はあるな⋯⋯。




⋯⋯キョロキョロしてたら女王蟻に気付かれた様だ。




体躯の割には小さな顎を精一杯動かし威嚇している。






「メテオストライクッ」




地割れの様な轟音とつんざく衝撃に一瞬気を失った。




気持ち悪かったので割と全力で掌底メテオを撃ってしまうと女王蟻の巨大な腹部が風船の様に破裂し、ドロドロした物が飛び散った。


⋯⋯うわぁ川の様に流れてる。すごい量だ。






ところで周りの卵とかも一緒に消えるんだろか?


消えなかったら万を超える数を1人で処理は厳しいな。




⋯⋯嫌な予感の通りだった。




女王蟻は消えたけど周りが消えない。


これは傭兵達に頼んだ方が良いか。魔石取り放題やで!




羽化しそうな繭だけをサクサクと刺し殺しておく。




視界に違和感を感じて、ふと部屋の中央を見ると地面がモッコリしていた。




「魔具キター!」




思わず叫んだ。






魔石発掘作業なんて放置して駆け寄る。




うーむ。モッコリだ。


コレどうしたらいいの?




とりあえず剣で刺してみると中の硬い物に当たった。


モッコリの周囲をザクザク切っていくと皮のようにペロリと剥けた。




中からオールドタイプな宝箱が出てきた。ファンタジー!




罠で矢とか出てきたら嫌なので横から短槍で蓋を抉じ開ける。




⋯⋯指輪が入っていた。


装飾と言えるのはサイドに古代文字風の楔文字ぽいのが彫ってあるだけの、石も何も付いてない燻んだ銀色の指輪だ。思ってたのと何か違う。






納得がいかないまま蛹なのか繭なのか知らんけど鬱憤を晴らす様に刺しまくり、何とか羽化直前の奴は退治した。




これの時間の方が掛かっているが、多分ここだけで100超えてる小魔石。






うーん。右の蟷螂も行っておくか。初回魔具特典あるかもだし。


ただ、あっちの方は硬そうだし強そうなんだよな⋯⋯。






この時の俺は「俺TUEEE」に酔い、すっかり忘れていた。


魔術を使う魔物がいるという事を⋯⋯。

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