第29話 未踏エリア


未踏エリアはどこもモンスターハウスの様相だ。






両手にショートソードを持ち牽制しながら、虫を踏み潰し蹴り飛ばす作業が延々と続く。






小魔石は既に50個を超えたんじゃないだろうか。






分岐は道幅の広い方を選び、お馬様部屋から数えて4部屋目にようやくボスが感知された。




お馬様部屋からここまでで3時間くらいか。


少し休憩しよう。汗が凄い⋯⋯。


しかしこの買ったばかりの中古革鎧も臭いな。




泊り込みでやろうかと思ってたけど水が無くなったら戻らざる得ないな。水の消費が思ってたより激しい。






ここのボスは何だろうか。山羊も確認されてたから山羊かな?


感知では部屋は円形でそれほど広くはない様だ。ボスはお馬様と同じくらいに感じる。




石壁を退かせて入り口の通路を覗き込む。






⋯⋯蜘蛛だ。


3メートルくらいのでっかいタランチュラ。擬態して高めの天井に張り付いておる。






おもむろに石ころを取り出す。




打ち上げ「メテ⋯ッ」


止めた。






危ねぇ!撃ってたら多分反動で腕が弾けてた!




重力あるから上向きに撃つの発動タイミング難しいな⋯⋯。




一瞬、「わー初見殺しだー動かないなら楽勝!」とか思ってましたすいません。






うーん。落ちてきた所を軽め縮地でカウンターかな⋯⋯。脚を狙って剣振れる程腕ないし。天井に張り付いてるくらいだから軽い事を祈ろう。






両手にショートソードを構えゆっくり歩き出す。




槍じゃなくショートソードにしたのは落ちてくる時に背中側ではなく、反転して柔らかそうな腹側から下りてくる方に賭けたからだ。






⋯⋯静かだ。心臓の鼓動がいつもより大きく感じる。






自分の歪な足音しか聞こえない。


縮地のための左足は即座に膝蹴り体勢に移行できる様に歩幅を小さくしている。






一歩。また一歩。






真下まで後1メートル。






⋯⋯きたッ!




音もなく脚を離した巨大蜘蛛はフワリと体勢を入れ替え、全ての脚を伸ばし落下姿勢だ。




やはり反転ッ!


狙うは頭胸部ッ!




「縮地!」




2本の剣を掲げ、自ら打ち上がる!






想定してたよりも柔らかく、軽い感触が剣を伝う。




エイリアンの様な叫び声を上げる巨大蜘蛛。






巨大蜘蛛ごと3メートル程飛び上がり、鍔まで刺さったところで剣を捻り手を離す。




体勢が崩れてしまったが、宇宙船の様に左右の足の振りと加速を細かくオンオフし、落ちていく蜘蛛を横目にゆっくりと地上に戻った。飛ぶ練習しといて良かった。




巨大蜘蛛は随分と軽かった。




瀕死なのか動かず、ひっくり返ったまま脚をピクピクとさせていたので掌底メテオでとどめを刺した。




⋯⋯うん。賭けにも勝って完勝。


いつ落ちてくるかのスリルだけだった。




でもやはり脚とか背中側はやたらと硬い。中身空洞な金属みたいだ。蟹?




うーむ。ここも魔石か。


レベルアップも無し。




⋯⋯奥に行けば敵が強くなる訳でもないのかな?


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