第27話 城塞都市ダンダム再び


3度目の城塞都市ダンダムにやって来た。


久しぶりと言う程時間は経ってない。




サーラちゃんも一緒なので初めて乗合馬車に乗って来たが、今なら走った方が早いかも知れん。




奴隷は入場料を取られた。大銅貨1枚。微妙なラインのプライシングだ。






ダンダム傭兵団詰所に顔を出す。ガロスさんいるかな?


「よぉ!閃撃の。久しぶりだな!」




「なんだ?その閃撃のって?」




「ダンダムでも噂されてんぞ?目にも留まらぬ速さで馬魔獣を一撃で仕留めた閃撃の槍使いってな!」


⋯⋯うわぁやっぱり造語ぽいので二つ名とか付けちゃうんだ。漢字ないよねこの世界?ふぁ⋯ふぁんたじー。


どうやらこの界隈の傭兵コミュニティには名が知れ渡ってるらしい。恥ずかしいので全力スルーだ。




「しばらくダンダムで静養する。個室がある宿を教えて欲しい」




「ん?そっちの嬢ちゃんと泊まるのか?」




「そうだ。面倒を見ている」




「傭兵が泊まる様な宿じゃ個室はねぇなぁ。身形は整えないとならねぇが商人用だわな」


宿屋と古着屋を教えてもらい早速向かう。困ったらガロスで検索!




ダンジョン街には子供服が売ってなかったので良い機会だったのかも。




荷物が増え過ぎても移動に困るので買い過ぎに気を付けながらも迷う。女の子の服選び意外と楽しい!




おっさんがニヤニヤと無表情な幼女にコレも可愛いんじゃない?とかやってる所は日本なら通報待った無しだろう。親子に見えるかな?


自分の綻びた服も買ったがこちらは即決。




ついでにサーラちゃんの髪も整えてもらって、金属鏡を覗くと少しだけサーラちゃんの表情が緩んだ。




トータルで大銀貨が1枚飛んでったけど連れて来てよかったとホロリとした。






⋯⋯その後は革ブーツを直しに出したり、サーラちゃんの旅装を整えたり、防具を揃えたりと手繋ぎデートを堪能しながらのんびりと肩を癒す事1週間後。




領主様からの召喚状が届き、そのまた3日後に1人でお城に赴く事になった。




出かける時にはサーラちゃんが少し寂しそうに手を振ってくれたので頭を撫で撫でしてきた。






案内されたのはまさかの謁見室だ。




先程、従者っぽい人に教えてもらった通りの姿勢で待つ。


手を伸ばした土下座だ。この体勢辛い。




5分くらいしてからぞろぞろと人が前方にやってきた気配がする。感知によると15名。ほとんどは兵隊さんかな?




「面をあげよ」


静かな空間に男の声が響く。




「ははーっ」


時代劇ノリだ。


派手なおっさんが真ん中で玉座みたいのに座っており、声を掛けてきたのは右隣の小太りのおっさんだ。


左隣は騎士かな?後の兵隊さんは俺の両サイドに並んでいる。




「其方が迷い人で閃撃のシュウで間違いないか?」




「はっ?ははーっ」


不意打ちで吹きそうになった。二つ名って偉大。




「この度の救助と魔獣の単独討伐、見事であった」




「ははーっ」




「褒美を取らす」




「ははーっ。有り難き幸せ」




「他に望みはないか?」


あれ?台本と違う。派手なおっさんが割り込んできた。隣の小太りおっさんが挙動不審だ。




「⋯⋯褒美を頂けるだけで自分には頂き過ぎでございます」


小太りおっさんが満足そうに頷いた。時代劇ノリでオッケーなのね。語彙が足りてればもっと時代劇できるのに⋯⋯。




「聞けば傭兵団にも正式に所属している訳でもないと聞いた。我が兵にならぬか?」


派手なおっさんがガンガンくるけど左の騎士と周りの兵隊さんがムッチャ睨んでるからね!コネ社会の職業軍人意識高ぇ!




「⋯⋯ありがたいお話ですが、生まれた場所も誰も知らない様な自分ですので褒美としては多過ぎるお話です。ははーっ」


語彙が辛い⋯⋯ははーっで誤魔化したけどこの返しで大丈夫か?大丈夫なのか?


嫌な汗が首筋をタラタラと流れていく。


左隣騎士の顔色は⋯⋯うーん微妙?


小太りおっさんは納得げだけど。




「そうか。此奴に魔具探索をやらせたい。どうしたら良いのだ?」


その欲望丸出しの質問って俺にしてないよね派手なおっさん?小太りおっさんにだよね?




「⋯⋯そうですな。迷い人への労役という形ではどうでしょう?他の民には影響しませんし」


さらっとエゲツない事を⋯⋯。




「見返りは?」




「此奴がほぼ単独で開拓していた場所を」




「ふむ⋯⋯」




「魔具を発見するまでは此奴の養女を預かりましょう。子連れでは探索に支障が出ますからな」




「⋯⋯それで良い。計らえ」






「はっ。それでは閃撃のシュウに命ずる。ダンジョンより魔具を発掘せよ。これは迷い人が負わねばならぬ労役であり、完遂すれば開拓村を譲渡し士爵を与える。尚、完遂するまで若しくは死亡するまでは養女をダンダム城預かりとする」






⋯⋯言葉が全然耳に入ってこない。




項垂れたのを平伏したのと勘違いしたのか偉そうな3人は満足気に去っていき、周りの兵隊に外に追い出された。






覚束ない足取りで宿に戻ると、案の定サーラちゃんは連れ去られており、受付が命令書を預かっていた。






「⋯⋯仕込み済みって事か」






迂闊だった。




見た目だけでもサーラちゃんを奴隷の様に扱っていればこんな事には恐らくならなかった。


ダンダムに連れて来なくてもこんな事にはならなかった。




領主やその取り巻きの遣り口にも腹が立つが⋯⋯何より自分の迂闊さに腹が立った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る