第22話 まさかのレベルアップ


 偽善⋯⋯偽善だよなぁ。




 貰ってきちゃってどうすんだよと。家もないのに。1人で外に出せば攫われちゃうだろし。



 ただなぁ。やっぱ放っては置けないよね。顔見知りが性奴隷ENDとか見ちゃうと⋯⋯。





 久々に傭兵団に顔を出してみた。


 身請けしたは良いけど本当に手続き上、問題ないのか確認したかったからだ。


「おお!シュウ!間引きか?」


「いや、今日はちょっと聞きたい事があってな⋯⋯」



 身請けした話をするとロリコンを疑われたものの手続き的には問題ないらしい。奴隷の扱いは実に雑だ。




「ちなみにダンジョンに子供連れて行ってもいいのか?」


「囮か?あまりお勧めしないな」


 とりあえず道徳的に疑われそうなのでダンジョンで戦闘訓練はやめといた方が良さげだ。あまり訓練にもならなそうだが。




 サーラちゃんにはもう暫く宿の個室にいて貰うしかないか。



 間引きはあまり上手くいっていないらしい。


「領主軍も大型魔物に蹴散らされてな。ウチの連中にも怪我人が出た。ゾッド傭兵団も増員してきたからアンタも間引きに入ってくれると助かる」


「了解だ」



 一度、宿に戻りサーラちゃんにオヤツを捧げつつダンジョンへ。






 穴の下で、松明を掲げて整列している他の傭兵団を横目に下り道を下る。



 おーおー随分と沢山で。例のゾッド傭兵団かな。



 でも、複数人のパーティだと人数の利を活かすためになるべく平坦な道を選ばざる得ないのか。




 こちらの小部屋にはまた敵が湧いている様だ。


 感知の大きさ的にもゴキブリが6体かな?




 さくっと踏み潰した。人は慣れる生き物なんだぜ。




 ここでまさかの違和感。


 ⋯⋯もしかしてレベルアップした?



 レベルアップ遅くね?普通もっと1匹倒したら上がっちゃいましたーとかじゃね?


 敵倒してレベルアップしたのか魔素が濃いところで活動してるからかは不明だけど。




 何が変わったかと言うと体内のマナの感触というか練り具合が変わった。


「賞味期限切れてやや乾燥した納豆」から「買ったばかりの納豆」くらいに!



 魔法の発動タイミングがやや早くなったかも。発動意思から実際の発動までタイムラグが無くなるか、せめて一定時間なら使い勝手良くなるんだけどなー。


 そもそもそんなに練り上げて貯めなきゃならない程マナ使う事ないしな。腕とか足とか飛んでくわ。


 ステータスは⋯⋯上がった感は皆無だな。



 これは⋯⋯レベル上がっても気付かない人がほとんどだろな。特に恩恵も無いし。




 分岐は人気のない細い道や険しい道優先で、気分良く2時間で25体を殲滅。



 天井に張り付いてる虫達も感知の敵ではない。今日も怪我無く終えた。



 傭兵団詰所に戻り換金していると団長が声を掛けてきた。


「シュウ、お疲れさん。領主から大型魔獣の討伐依頼があるんだが受けてくれないか?」


 うわーお馬様とかと戦えって?


「それって単独で?」


「いや討伐チームを組む。1泊8名の予定だ」


「複数人だと戦い難いからやらない」


「そう言わずに何とかならんか?」


「多分、同士討ちで怪我する」

 槍を軽く掲げて応える。


「うーむ。単独で討伐を頼む訳にもいかんだろう?」


「それは流石に無謀だと思う」


「だよなぁ。怪我人を理由に引き延ばしとくか」




 ⋯⋯風向きが怪しくなってきたな。


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