第16話 ノーパン卒業DAY


 擦った揉んだの数日後、普段よりも護衛を増やしてやってきた見回り役によって馬車で城塞都市ダンダムに強制連行された。



 ここ数日間は半壊した家を直したり、更に血を吸った掘立小屋でトラップ作成講座したり、塞ぎ込んでしまったサーラちゃん8歳のご機嫌を取ったりと過ごしていたのに青天の霹靂だ。





 傭兵達の調査報告もあっただろうから、あの野蛮な外国人奴隷は何者だみたいな話にでもなったんだろうか。



 自衛メインとはいえ、さり気なく結構殺しちゃったりしてるしなー。俺ってこんなにサイコパスっぽい奴だったっけ?



 マズローさんの欲求階層の底辺を這い蹲ってるとこうなってしまうのだ致し方ない!貧すれば鈍すのです!





 そんな自己弁護を考える間も開拓村送りの時の目隠し荷車とは雲泥の差な馬車は、城門をサラリとノーチェックで通過していく。



 馬車のグレードから悪い様にはされないのではと前向きに考える事にした。⋯⋯座席の両脇には抜身のショートソード持った兵隊さんが座ってるけど。




 城門を二箇所くぐり、兵隊さんの宿舎ぽい所で降ろされた。



 水場に案内され水浴びをさせられる。何故に衆人監視の元で水浴びさせられてるのだろうか。



 あんな開拓村に居たけど意外と清潔にはしてたのよ?



 終わると麻の手拭を渡されたので感激してウルっときた。


 布を使うなんてなんて文明的!


 更にフェルトの貫頭衣とズボンを差し出され、脱ノーパンを果たした俺は今なら開拓村でモテモテシティボーイになった気がした。おっさんだけど。



 開拓村スタンダードな藁編み服は下半身とか色んなものがチラチラ見えそうになるから目の毒なんだよね。奥さんとか。



 勃ったら丸分かりだし。




 突然な素敵対応に目を白黒させたまま、まるで裁判所みたいな部屋に案内され、被告人の如く圧迫尋問が開始された。黒い上着達は裁判官か何かか?


「お前はどこから来た?」


 またそれか⋯⋯。

 静まり返った室内が妙に緊張感を煽る。



「ニホン。

 ⋯⋯朝起きた、ダンダム、いた。

 きた、わからない、いた。奴隷、なった」



「ニホンの名は何という?」



「真柄修一。38歳だ。ここでは、シュウ」


 いつも通りの慣れたやり取り。吃らず言えました。


 語彙力も大分アップしたんだぜ。




 ザワザワとする中、1人の男が引っ立てられてくる。



 ⋯⋯こっちに来た初日に牢屋の前にいた偉そうな奴だ。蔑む視線をよく覚えている。



 喚く奴に裁判官は何か申し付けると、ワラワラとやってきた兵隊さんが奴を押し倒して焼きごてジュー。絶叫と飛び散る鼻水。



 うわぁ。痛そう⋯⋯。



 何故か俺の周りにもワラワラと。え?何?何?


 ジュー。ウギャー。


 焼印の上に新しい焼印を上書き保存。雑な感じだ。痛てーし。




 項垂れた偉そうだった奴が連行されて行き、裁判官風の奴が「これで一件落着」風な事を宣った。



 ⋯⋯いや、何で俺まで痛めつけられたし!



 その後は妙にフランクになった兵隊さん達が食堂に連れて行ってくれた。



 干し肉の入った細長い米の粥、根菜とタマネギのスープ!なんと食べ放題!


 数ヶ月ぶりの文化的でまともな飯をがっついた。



 落ち着いた食後に兵隊さんに聞いてみると、稀に黒目黒髪の異世界人がやってきて偉業を成すらしい。何その日本人狙い撃ちの設定。



 大体、この辺の人達もやや褐色の肌と鳶色の目と髪なんでそんなに黒目黒髪が目立つ訳でもないと思う。




 そんなこんなで、異世界人認定された俺は奴隷ではなくなり保護観察対象に、勝手に奴隷に落とし開拓村送りにした偉そうな奴が奴隷に落とされたみたいだ。



 え?奴が俺の後任村長とかになったりしないよね?大丈夫?





 ⋯⋯こうして俺は開拓村の皆に別れも告げぬまま城塞都市ダンダムに軟禁される事になったのだった。



 サーラちゃん⋯⋯おじちゃん居ないけど強く生きるんだよ!

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