第9話 頭が変わってもやる事変わらぬ


 スライを旗頭として天下統一(開拓村)を果たし、混乱を治めた我々は一時の平和を得た。


 お馬様で混乱してたはずで解決してないんだけどもねー。



 あれから小太りなスライは剣の素振りを始めた。


 示威じい行動もあるだけだろうけど、群れていたカースト1位メンバーが居なくなり、自分の身は自分で守るしか無くなった危機感が彼を駆り立てているのだろう。割と真剣だ。



 でも食べ物が少ないから、無駄に運動して無駄に食べるのはやめて欲しい。




 やってきた補給役はやはり人数減った分だけ配給量を減らした。


 村内闘争劇はペナルティにはならなかった様で人数割だと現状維持くらいだそうだ。ちょっと安心した。


 お馬様降臨の件は持ち帰り検討らしい。

 自分の身が可愛いのだろう。逃げる様に帰って行った。さもありなん。


 ⋯⋯10日後ちゃんと配給に来てくれるのか不安だ。




「スライ、これ、見ていいか?」

 荷を指差して打合せから戻ってきたスライ聞いてみる。


「ああ、確認してくれ」


 よっしゃラッキー!言ってみるもんだな。


 荷を確認してみると芋が300個、玉ねぎ20個、掌サイズ干し肉10個、塩とランプ用油それぞれ一袋、だった。


 5人分なのかな?テキトーやな。助かるけど。


 何だよ玉ねぎとか干し肉とか結構あんじゃん。晩飯のスープらしき物にはカケラしか入って無かったのに!



「スライ、無い、ならない、食べる、大丈夫か?」

 うーん。通じるかな⋯⋯。


 ジェスチャーとシミュレーションを交えて何とか伝える。


 毎食、1人芋3つずつ。玉ねぎ1つと干し肉半分を使ったスープを食べ、芋60個は備蓄しておく事を提案してみた。


 さり気なく朝飯はお湯じゃなくてスープにしようぜも盛り込んでいる。



 ⋯⋯当初、難色を示していたスライだが、備蓄はスライの物とした所で喜んで合意した。


 今まで芋4個は食ってたんだから4個は食いたいそうな。そうですか。



 機嫌が良くなったところで、在庫の余っている塩をくれくれ要求をしてみたら理由も問われずに許可が出た。チョロい。



 知識チートによると塩こそが辺境での生命線!俺の左手の紋章が疼くぜ。奴隷紋だけど。

 色々使えるんだよね塩。スープの塩味は干し肉オンリーだったらしく一袋丸々残っていた。



 晩飯時に4人で今後どうするかの話になったが、飯炊女バータは相変わらず死んだ目で一言も喋らず、スライとダン爺が話し合っていた。


 話し合っていたというか無口なダン爺にひたすらアレコレ丸投げしようとしてる風だけど。



 俺はネイティブな会話速度についていけなかったので、意見を求められた時にとりあえず柵を強化した方がいいんじゃなかろうかと言ったら「是非、頼む」とのお言葉。


 おっとー。


 その代わり、水汲みはしょうがないとしても薪のために村周辺の柴刈りくらいは誰かにやって欲しいとお願いしたら皆目を逸らし場が静まり返った。


 ダン爺、お前もか。



「じゃ、水汲みは⋯⋯?」


「⋯⋯水汲みも柴刈りも、柵の補強もやって欲しい」

 絞り出した様な細い声でスライがそう言った。



 ため息一つ。


 ああーこういう会議、経験あるわー。



 あれですね。会議という名の押し付け丸投げ会ですね。わかります。

 言い出しっぺがやれとか言われてしまう、発言すると損するやつやな。


「水も薪も、少なく、使うならいい。全部、できない」


「分かった。無駄使いしない様に気を付けよう」



 ⋯⋯そんな感じでほとんどが俺に丸投げされ会議はお開きとなった。外に出ないで出来る事ってここには余りないもの。そりゃそうだ。



 食生活は若干改善したし、人数も減ったので前よりはマシになったと思いたい。


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