第10話 冒険者がやってきた


 柵の補強は遅々として進まなかった。

 強度のある木材の入手が出来ないのだ。


 確かに藪を抜けて山の方まで行けばそれなりの木が生えてっけどさー。


 一人で運べないじゃん?


 斧で木を切ろうとすれば、音でゴブリンさんもやって来るし。ソロ伐採は無理ゲーだ。


 ⋯⋯人殺しにしか使われないあの斧。不憫だ。

 置いて逃げてきちゃったけど。俺、手斧派なんだよね。重いの無理。


 きっとアックスゴブリンが爆誕して人殺しとかに有効活用してくれる事だろう。




 また十日ほど経って見回り補給のシーズンがやってきた。


 お馬様を警戒して来なくなるんじゃないかと心配していたが護衛増やしてやって来てくれた。


 なぜかその護衛の内の蛮族3人を置いて帰って行った。


 どうやら冒険者的役割な方々らしい。

 小汚い革鎧に槍持って、腰にショートソードをいているザ・山賊風のオラオラ系の方々だ。



 応対は小太りスライ様にお任せして、村の中では目を合わせない様に下見てコソコソ歩く事にした。




 蛮族達は我が物顔で飯炊女バータを拉致りつつ、掘立小屋に滞在3日目。



 その日、調査に出ていた蛮族3人は2人しか帰って来ず、バータをタコ殴りにした挙句に、スライもサクッと刺し殺し、剣などの金目の物を強奪して城塞都市ダンダムに逃げ帰ったらしい。もうちょっとで日が沈むのに。


 薄々気付いてたけど、やっぱりこの世界は冒険者も夢も浪漫も無いんだなー。うん知ってた。



 お外で柴刈りしてて良かった。


 何か騒がしかったから邪魔しない様にゆっくり帰ったんだよね。



 また穴掘りかー。

 まー明日でいいかーと思ってたんです。




 そしたら、翌朝にはダン爺とバータが食料持って失踪してました。


 しかも柵の出入り口開けっぱなしで!



 昨日は家帰って寝ていたら、バターンって顔を腫らしたバータが罠にかかり襲撃かと思えば怖くて1人じゃ寝れないって言うんで、ダン爺を人材派遣していたのでした。




「あいつらデキてやがったのかッ⋯⋯!」


 慟哭どうこくした。




 そしてこの時が俺様シュウによる天下統一(開拓村)が成された瞬間だった。ボッチで食い物もないけど。



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