第8話 初めての自己紹介と後片付け
血の匂いが濃いせいか夜が明けたにもかかわらず狼達が帰る気配が無い。
長槍で突いて追い払うも遠巻きにして陣取られている。
レベルアップとかスキル発生とか無い様だ。木の槍じゃ倒せん。
⋯⋯水汲みは今日はお休みだな。
水をジャブジャブ使う馬鹿が60%オフになったからまだ大丈夫か。
それより昨晩の後片付けが憂鬱だ。
掘建小屋は昨日のまま、元キー君であった物もそちらに移動されている。
元カースト2位宅から剣持ちと飯炊女が出てきた。おはよう。
昨日の今日なので2人とも顔色は優れない。
朝飯が芋3つになった。
俺も出世したものだ。
ダン爺を通訳に、戦闘経験あるのかとか色々質問されたり話をした。こんなに頑張ったのは異世界来て以来だ。レベルは上がらないけどジェスチャー表現力スキルと地面にお絵描きレベルがUPしたなこれは。
小太りな剣持ちの名はスライ。31歳。
貧相な飯炊女の名はバータ。29歳。
ダン爺は50代だそうだ。50から先は覚えてないとかカッコいい事を言ってた風。
ようやく異世界あるあるの、見た目と歳が違う!が発生してウルッときた。
スライとか年上だと思ってたよ!ダン爺も50代で爺の貫録出してんじゃねぇよ!
女も同年代くらいだと思ってたぜ。20代で驚きの重力への負け具合。もっと立ち向かおうぜ!
俺が38歳だと言うのもやっぱり驚かれる。日本にいた時も飲み屋のネーチャンには「32歳くらいに見えたーわかーい」って言われてたしな。
30歳くらいだと思われてたらしい。ヨイショし過ぎ。
スライ含めカースト1位の連中は元騎士だったらしい。だから妙に見回り補給役と親しげだったのかも。
その割に強い訳じゃなさそうだ。昨日も剣をブンブン振り回してだけだし。
きっとチンケな贈収賄か何かで奴隷落としになったけど、村を作れば村長にしてやるみたいな事を言われていたから村ができる前から支配者気取りだったのね⋯⋯とは語彙が足りなくて言えなかった。
どこから来たのかと質問されても日本としか言い様が無く⋯⋯。
アレコレ説明しようとしても通じない。大体、俺も分かんねーもの。起きたら捕まってて牢獄だもの。俺が聞きたいわ。
あの城塞都市はダンダムって名前らしい。他の連中はダンダム生まれとのこと。ダンダムなのかダンドゥムなのか発音怪しいが。
スライは割と話が通じそうだ。単に殺傷力レベルが同等か負けていると判断しているだけなんだろうけど。
大丈夫。俺は怖くない。怖くないよ。
平和大好き。人間同士助け合おうよ。
俺なんて斧だの鍬だのより間合いの広い槍で、近寄らない様に背後から突き刺しただけに過ぎない。
八極拳とか李書文の漫画好きだったなレベルの武道未経験者だ。戦いとは間合いが全てなのだよフハハ。
日本だと権力って社会的地位を脅かしたりがメインだろけど、ここじゃ権力と暴力がニアリーイコールだもなー。
謀殺されそうな権力者なんてなりたくないから、日本人気質を発揮して
そもそも、あまり馴れ合うつもりもない。こっちきてすぐ俺、学んだ!命、軽い!人権って何それ美味しいの?
「バータ使う?」みたいなライトなお誘いもあったけど丁重にお断りしておく。獣耳かエルフでおなしゃす!
その後、3つ穴掘って奴隷頭とその取巻き、その他はまとめて埋めた。
⋯⋯グロくて吐いた。人殺しよりお片付けの方がよっぽど精神的難易度高いと思うんだ。
せっかくの芋3つが。
絶望した!
掘建小屋の血の海の土間は上から土を被せるだけだった。ダン爺、そんなんでいいのか?
ハエがブンブンしてるけど。
残された食糧備蓄はあまり無かった。
欲望の赴くまま食いやがったなコイツら。
働かざるもの食うべからず⋯⋯ていうか食い物が無かっただけでした本当にありがとうございます。
奴隷だからなのかこの世界の人がそうなのか知らんけど、刹那的というか後先考えない人ばかりだ。奴隷だからか。奴隷だもんね。俺も奴隷だけどね。
結局、後片付けで丸一日費やした。
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