第5話 お馬様との遭遇
水辺へと向かっていたのだが前を歩くキー君が崖っぷちで突然立ち止まる。
「……敵、いる?」
小声で問い尋ねるも返答がない。
後ろのダン爺にジェスチャーで待つ様に指示し、恐る恐るキー君に近づく。
対岸に威風堂々と佇む黒い馬?がいた。
完全にこちらをロックオンされていらっしゃる。
サラブレッドなんかと比べると背丈は小さいが非常にマッシブ。
牙なんか生えててガルグル唸っていらっしゃる。肉食獣のプレッシャーが凄い。
目線を切らない様に、震えるキー君を連れて後ろに退がる。
刺激しない様にゆっくりと。
お馬様のお姿が見えなくなった所でキー君を抱え、ダン爺と全力疾走。
柵の出入り口の衝立をガタガタ震えながら何とか外し、滑り込む様にへたり込んだ。
キー君は下半身べちょべちょだし。俺も冷や汗ダラダラ。
「うわぁ。やべぇ」しか出てこない。
「ダン爺、あれ、何?」
ダン爺は現地語で答えてくれたものの勿論知らない単語だ。
馬?でいいのかな?
俺の知ってる馬は草食獣なんだけど。
とりあえず、馬?と覚えておこう。
あんなのに遭遇しちゃうと水汲みがトラウマになりそうだ。
この村の柵で耐えられるんかな。
全力ブチかましされると柵が倒壊しそうで不安だ。
ダン爺が奴隷頭に報告に行ってくれて、開拓村は騒然となった。10人しか居ないけど。
よく聞き取れないが、奴隷頭取巻きとカースト2位の若者3人が言い合いというか罵り合いをしている様だ。
「キー、大丈夫か?」
「大丈夫。死ぬ、考えた。」
うん、俺も死ぬかと思った。
アレは魔獣なのだろう。威圧感半端なかった。
若者3人は馬?魔獣出没を理由に、みんなで城塞都市に逃げる事を主張している様だ。
奴隷頭と取巻きは逃亡するなら殺すと脅してるんかな?
まぁ、逃げた所で殺処分されるのがオチなんだろう。
どう転がるのか不明だが敵という意味合いではここにいる人間の方が脅威度が高いんだよね。今の所。
外敵に備えて武装しようもんなら反乱を恐れて内部の多人数に折檻されるのが現状だし。
……結局、諦めた若者3人はニヤニヤしながらキー君を拉致って行った。慰み者にする様だ。ホモォ。
あの家に4人は狭くないか?
ダン爺と庇い立てできなかった無力感と申し訳なさを抱えながら過ごした翌朝。
下位者への侮蔑の感情を瞳に宿したキー君がいた。あいつらと同じ濁った目だ。
そして、朝食の芋は再び1つだけに戻り、水汲み役は俺とダン爺に押し付けられる事になった。
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