第5話 ロボット
先日のレックでの会合の折、信介は犯人の心当たりがあることを言わなかった。榎本はサイバーポリスである。警察官の前で勝手な憶測を言うことは憚られた。当人にどんな迷惑が掛からないとも限らない。ただ、疑念は深まるばかりだった。
ジャンキー@janky. 30分
槇村不動産販売のHPが書き換えられたらしいですね。
西部劇@western. 20分
ワイドショーでもやってましたね。バスハッキングがあったばかりですからね。
パンパカパン@panpakapan. 15分
これは間違いなくあのマンション狙われてますよね。でも、どうしてマンションなんかをハッカーが狙うんでしょう。
イチロー一番@ichirofirst. 12分
狙われてるのは槇村不動産でしょ? アメリカでのマンション開発がうまくいってないとかって記事にありましたよ。
西部劇@western. 10分
槇村不動産て中堅ですよね。アメリカなんかで開発やってるんですか?
イチロー一番@ichirofirst. 10分
すいません。週刊誌の受け売りです。
ジャンキー@janky. 9分
ハッカーの狙いは槇村不動産ではなくて、タワマンですよ。書き換えられたHPもバスハッキングのマンションのページです。
パンパカパン@panpakapan. 今
そうなんですか? でも何でなんです?
西部劇@western. 今
そりゃ、タワマンに住んでる金持ちが憎くて・・・。それとも住人の誰か、個人的に狙ったとか。
ジャンキー@janky. 今
新たに流入してきた住人と古い町に住む住人との対立じゃないですかね。だって、福祉サービスにしろ教育にしろ急に人口が増えて昔から住んでる人にしてみれば不便を強いられるんじゃないですか?
Amadeus@amadeus. 今
それはどうですかね。税収は増えるわけだから高齢者の多い町なら逆に潤うのでは?
ジャンキー@janky. 今
それはそうですが、歳入なんて個人には分かりませんからね。祭りの寄付とか託児所の定員とか、駅だって混むようになるし、社会インフラへの不満も増えるでしょう。
Amadeus@amadeus. 今
それはそうですが、だからと言ってマンション全体を狙いますかね。自動運転バスをハッキングして誰かを怪我させるのは・・・違うんじゃないですか?
ジャンキー@janky. 今
マンションの建設に反対だった旧町民がマンション住人を追い出したくてやってるんじゃないですか?
Amadeus@amadeus. 今
追い出して何になります? すでにあるのに。これが廃墟になれば町は負債を抱えることになる。私は個人的な私怨じゃないかと睨んでます。
珍しくアマデウスが論争に参加した。昨日の会議のことを考えると、アマデウスこと村雨丈一郎の言う私怨というのは的を射ているような気がした。そして、ジャンキーはこのマンションの誰かを恨んでいるのでは?
信介はあえてTwisterには参加せずにパソコンを閉じた。そして久恵が作りおいてくれたオムレツの温野菜添えに味噌汁を温め直すと、炊飯ジャーから熱いご飯をよそって食卓に並べた。40階のダイニングの窓からは隣町まで続くJRの線路が見える。近隣マンション群はこの高さではないまでも十数階建ては多い。肇じゃないが、墓標が並ぶようにも見えなくはなかった。
久し振りのご飯の朝食を部屋で取りながら信介はさっきのTwisterのことがやはり気になっていた。なんで、村雨はいつもはしない論争に加わったのか。いやそれ以上に、ジャンキーのことが気になった。もしかしてこのマンションの住人なのでは? そんな予感が働いていた。
IPアドレスを辿る方法はなくもない。だけど、それで問題の解決になるとも思えなかった。もちろんバスハッキングの依頼者だったら実行共同正犯が成り立つ。だけど、IPアドレスがたとえ分かったとしても立証には警察権力が必要だ。そこまでの確証はない。
その時信介のスマホが鳴った。
「おはようございます。佐崎です。」
相手は村雨だった。
「もしかして食事中じゃなかったですか?」
「あ、いえ、大丈夫です。」
言い当てられて、改めて何もかも鋭い人だと信介は思った。
「失礼しました。お済みになったら折り返し下さい。」
信介が何を言う間もなく電話は切れてしまった。
『さすがだな、村雨さん。』
信介は食事を済ませると食器をシンクに運んでテーブルを拭いた。自室に戻るとおもむろにスマホを開いた。
「申し訳なかったです。」
コールバックに村雨はすぐに出た。
「いえ、妹が朝食を用意してくれるので、ゆっくりしていました。」
「ああ、海外出張中の妹さんが帰って来てたんでしたね。」
「もう、仕事に行っちゃいましたけどね。2ヶ月の出張から昨日帰ってきて、もう会社です。」
「キャリアウーマンですね。」
「さっきは少しびっくりしました。村雨さんがあんな論争に加わるなんて。」
「ジャンキーさんね。あの人タワーシティの住人じゃないですか?」
村雨がいきなり言い出した。
「どうして?」
信介は心持ち緊張した声で電話の向こうに尋ねた。
「意見に思い入れがあったように感じました。」
「思い入れ?」
「そう、旧住民と流入住民の反目、経験したことがあるんじゃないですかね。」
「それは・・・。」
信介は村雨の推測に素直に同意したものか迷った。
「以前Twisterでジャンキーさん社会福祉協会員だか民生委員だか、忘れましたが、そんな仕事をやったことがあるって言ってたでしょう。」
信介には全く覚えがなかった。だが、村雨が言う以上間違いなくそうなんだろう。村雨はそういう人だった。
「その時に旧住民と流入住民の対立があった。だから当然ジャンキーさんは古くからの住人だと言うことです。そしてなんらかマンションの建設に関わりがあった。もしかしたら地主でタワーシティに特別分譲枠で入居したのかも知れないです。」
「え? そこまで?」
「たんなる空想ですけどね。」
村雨がこともなげに言う。
「実は昨日敢えて言わなかったんですが、私もジャンキーさんはうちのマンションの住人なんじゃないか、で、一連の事件の主犯じゃないのかと疑い始めてました。」
「それはどうしてですか?」
信介が正直な疑念を話すと、村雨が畳みかけてきた。
「先日の会話でもそうですが、マンション建設前夜の事件にやけに詳しかった。もちろん、ただのワイドショーファンかも知れませんが。」
相変わらず信介の答えは歯切れが悪かった。
「少し調べてみましょうか。ただ、私は彼が犯人だとは思っていません。今回の事件は少なくとも住民同士の対立なんかではありませんよ。もっと根深い怨嗟を感じます。」
村雨との会話を終えて信介は考え事をしながらゴロゴロしていた。するとコンシェルジュデスクから内線が掛かってきた。
「佐崎様ですか? ただいま宅配便が到着しました。宅配ボックスに入りませんのでお知らせ致しました。お引き取りいただけますでしょうか?」
「そんなに大きな?」
マンション2階の宅配ボックスはかなり広い。それに入りきらないとは一体何だろうか。自分は何かを買った覚えはなかった。たぶん妹が通販で買った品なのだろう。信介はそう考えて引き取りを承諾した。2階ではコンシェルジュの男がスマホで荷物の写真を1枚撮ると、何か文字を打ち込んでいた。
2階に降りた信介はコンシェルジュデスクで台車を借りると荷物を載せて貨物エレベーターへ向かった。貨物専用のエレベーターは引っ越しの荷物などの上げ下ろしに使う。カウンター奥の扉を入ったところにあった。
「あら、佐崎さん。こんにちは。」
エレベーターホールには先客がいた。三橋夫人である。
「三橋さん、最近お会いしませんでしたが、お元気ですか?」
信介が挨拶を返した。
「はい。最近はおとなしくしてます。」
「いや・・・。」
別にそういう意味ではなかったのだが、そう返されて信介はドギマギしてしまった。エレベーターに乗り込むと、
「それ、なんですの?」
三橋夫人が台車の荷物を指さして尋ねた。さっきから聞きたくてしょうがなかったのだろう。
「たぶん妹が買ったんでしょうね。私はこんな物は買いません。」
三橋夫人はエレベーターの中で台車の周りを一回りすると、
「わあ、いいんだあ。これ便利だそうですよね。」
しみじみと言った。
「そうですかねえ。こんなモノはいらないって妹も言ってたはずなんですが。」
「そんなことないと思いますよ。色々家事は大変ですから。こういうのがあれば楽ですよ。わあ、いいんだあ。」
もう一度そう言って、三橋夫人は10階で降りていった。
どうも貨物エレベーターも移動の手段に常日頃使っているようだ。これで当家に家事ロボットが入ったことが筒抜けになった。信介はこんなモノを買い込んだ久恵の真意を測りかねていた。
その日妹の久恵が仕事から戻ったのは夜も9時を過ぎてからだった。
「私、こんなの買ってないわー。」
信介の指摘に久恵は即答した。久恵が宅配便の伝票を改めて見てみると、家電量販店の本社からと分かった。
「お客様感謝キャンペーン係って書いてあるよ。タナカ電機のキャンペーンにお兄さん応募してたんじゃないの?」
久恵はそう言うと着替えのために部屋に引っ込んだ。
「覚えてないなあ。」
信介はしげしげと伝票を見詰めながら首を傾げた。
「タナカ電機ではしょっちゅう買い物してるんでしょ? 年末は年賀状作るのにプリンターが壊れて買い直してたし。自分で応募しといて忘れてるのよ。」
部屋着に着替えて久恵がキッチンに立つ。冷凍庫から冷凍食品を物色して、レンジに入れた。
「よく店頭で応募用紙に住所氏名だけ書いて入れたりするのあるじゃない。そういうのやったんじゃないの?」
「記憶にないが・・・。」
信介は首を傾げるばかりだった。確かにタナカ電機は隣町の駅前にある。都内へ出た折には各地の店舗を利用することもあった。そんな中で応募したかも知れない。
「そうそうタナカ電機のネット通販も使ってたじゃない。クリック一つの応募なんて忘れちゃうわよ。」
「そうかもしれないな・・・。」
確かにタナカ電機のネット通販なら何度か利用したことがあった。信介も段々と自分が懸賞に応募したと思い始めていた。
「これ、ホッパー君の最新機種だ。このマンションの照明器具と湯沸かし器、あとうちの家電だと掃除機でしょ、エアコン、電子レンジも連携するわ。便利ね〜。」
久恵がどこで仕入れたのかホッパー豆知識を披露した。
「おまえ、ロボットなんかいらないって言ってたじゃないか。」
信介が咎めるように久恵に言うと、
「わざわざ買うことはないと思ってたわよ。でも、貰えるならいいじゃない。家事から解放されるかも。ま、そこまで甘くはないと思うけどね。それなりに使えるわよ。」
明太パスタを食べながら久恵は嬉々としている。
「じゃ、明日設定しといてちょうだい。」
というわけで、信介は家事専用ロボットホッパー君の設定役を仰せつかることになってしまった。
翌朝信介は久々にパンケーキ屋へ足を運んだ。久恵がまた出張に出てしまったので、朝食を食べに来たのである。出張と言っても今度は大阪へ1泊だけだった。束の間のパンケーキというわけだ。
「いらっしゃいませ〜。」
店に入るといつもの快活な明恵の声が店内に響いた。店は珍しく混んでいて、信介は窓際のカウンターテーブルに落ち着いた。
いつものセットを注文して待っていると、隣に六郎が座った。
「おはようございます。」
「やあ、どうも。おはようございます。」
挨拶を交わすふたりはあの会議以来だった。槇村不動産HP書き換え事件以後何も起こっていない。タワーシティも平穏を取り戻しつつあった。が、どの事件も未だ何の解決もしていないのだ。
「いやあ、ロボットの設定が大変で・・・。」
信介がすぐに昨晩の出来事を六郎に話した。
「え、そりゃ凄いですね。いよいよ佐崎さんちも未来生活だ。」
この「未来生活」というのはホッパーのメーカー、デジタルバンクが盛んにCM放送で流しているキャッチコピーである。
「それにしても充電に8時間も掛かるなんて、けしからんですね。」
信介が開梱して最初の作業である充電の面倒を愚痴った。
「まあ、仕方ないんじゃないですか。それだけの容量の充電池、最新の急速充電可能なのにすると充電池の価格だけで今のホッパー1台分くらいするはずですから。」
六郎がパンケーキを頬張りながらもごもご言った。
「そうなんですか? 充電池って高いんですね。」
「電気自動車がなかなか普及しないのは充電ステーションの数もさることながら充電池の問題ですよ。」
「そういえば、怪我をされた何某さんはどうしたでしょうね。」
信介が話題を振ると、六郎は、
「ああ、あのおばあちゃんならすっかり元気になってますよ。肋骨のひびも完治したみたいです。ただ、もうバスには乗りたくないと・・・。」
笑いをこらえるように答えた。
「確か水泳を楽しみにしてたんですよね。可哀想に・・・。」
信介が言うととうとう耐えきれずに六郎は笑い出した。あっけにとられる信介。
「すいません。いえね、おばあちゃんはバスには乗らずに毎朝タクシーで通ってるそうです。」
「タクシーで?」
「不動産と神野自動車から賠償金が出てるんで、その金でタクシーに乗ってるって話です。」
「でも、毎日毎日往復じゃあ・・・。」
「プールまでせいぜい1〜2メーターくらいでしょ。800円くらいですよ。往復して1600円。賠償は治療費も含めて数十万せしめたそうですから、2、3ヶ月はタクシー乗れますよね。」
「でも、その後は・・・?」
「その頃にはまた元気にバスに乗りますよ、きっと。いや間違いなく。そういう人です。」
「力強いな。」
「はい。今時の高齢者、簡単にへたばってたら生き抜けません。我々だっていっしょですよ。」
そこへフロアリーダーの明恵がやって来た。
「お水をお注ぎします。」
そういうと六郎と信介のコップに水を足した。
「人が入ったんだね。」
と信介。
「はい。ようやく。」
店が繁盛してフロアにはもうひとり制服を着た女性が立ち働いていた。だからフロアリーダーというわけだ。
「さすがにワンオペでは無理ですって、嘆願して増やして貰いました。」
「そりゃ良かった。今度の子はAIに認識して貰えたんだね。」
「はい。」
明恵は満面の笑みを信介に向けた。素直に可愛いと思う。営業部長を経験した信介は当然銀座・赤坂など夜の女性とも面識はあった。もっとも今ではすっかり縁は切れてしまっていたが。とにかく若い女性と気楽に話が出来るのは楽しかった。
「佐崎さん、さっきホッパーが手に入ったって言ってませんでした?」
明恵が信介に聞いた。
「あ、耳がいいね。そうなんだよ、家電量販店のキャンペーンで当たってね、今日は朝からホッパーの設定やってるんだ。」
「わあ、未来生活ですね。」
明恵も六郎と同じ事を言った。
「未来ね・・・。今日中には設定終わるから、明日から家事を分担してみようと思う。それが未来になるのかどうか・・・。」
信介はニコニコしながら答えた。
信介が部屋に帰ると同時に村雨から電話が来た。やはりジャンキーはここタワーシティの住人であるらしい。村雨はジャンキーのIPアドレスから割り出したという。
「でも、村雨さん。IPアドレスは接続ごとに変わる浮動タイプでしょ、我々個人のものは。分かるのはせいぜい都道府県単位位じゃ・・・。それとも、割り出せるものなんですか? まさか、違法なことを・・・。」
村雨はあのレックの元エバンジェリストである。そのくらいのことは出来るかも知れない。
「まさか。佐崎さんのIPを利用させて貰っただけです。」
「え?」
「お宅のマンションはプロバイダーのポプラと法人契約してますよね。それを不動産が各個に割り振ってるわけです。つまりIPアドレスに規則性があるわけです。ジャンキーさんのIP、佐崎さんのIPアドレスと同じでした。同じ規則性でIPが割り振られていたというわけです。だからまず間違いなく同じマンションの住人であろうと、そういうことです。もちろん百パーセントではありません。」
村雨は自分のIPとジャンキーのIPを比べて割り振られる規則性を比較して予測したということだった。
「なるほど。でも、村雨さんはジャンキーさんは犯人じゃないとお考えなんですよね。」
「はい。私はそう考えています。」
村雨は明快だった。ジャンキーさんは同じタワーシティの住人だった。もしかしたら特別分譲の優先入居者なのかも知れない。ごく身近な人なのかも。信介はある人の顔を思い浮かべていた。
その空想を無理矢理断ち切って信介はもう一つの疑念を村雨に投げかけてみた。
「実は気になる人物がもうひとりいるんですが・・・。」
信介はそう切り出すと、先般から燻っている疑問を村雨に話し出した。
「コンシェルジュが?」
「確かにその人物ならマンションの様々な人に精通していますね。」
「はい。今にして思えば、ウィルス感染させられて住所録を抜き取られた三橋夫人、スマホを乗っ取られた山田章子嬢、フィッシングに引っかかった緑川夫人、ピンポイントではないものの属性から言えばターゲットとしては申し分ないかと・・・。」
「ううん、どうなんでしょうか。それでそのコンシェルジュ氏は得をするんでしょうか?」
村雨の反応はまたしても鈍いものだった。
「いや、そこら辺は全く。彼はもともとホテルマンだったらしくホテル不況でこの仕事を見つけたそうです。近々ホテルへ再就職すると言ってました。」
「ならば、益々そんな問題を今起こしますかね。再就職前の大事な時に・・・。」
「まあ、確かにそう言われてしまうと、そうなんですよね。彼は出身も地方のようですし、マンションの建設にも関係ないようです。」
「ならば、佐崎さんの考え過ぎではありませんか? そのインターホンの件は単純な切り忘れと考えて差し支えないかと。」
村雨にそう言われると信介も納得せざるを得なかった。ただ、彼が住人の情報を主犯に流しているという疑念はきれいに消し去るというわけにはいかなかった。
「まあ、それと意識なしで情報を抜き取られたって可能性は残りますけどね。」
村雨である。
「それはどういうことですか?」
「だから、ついうっかり口を滑らせた。あるいは、好きな女の前でつい知ってることを自慢げに話してしまう、なんて男は結構いますよ。セキュリティ構築の鉄則はシステムの強固な組み立てではなく人的な漏洩をいかに防ぐかということです。」
「でも彼はホテルマンですよ。個人情報の守秘義務は身に浸みているはずですが・・・。」
「彼は以前勤めていたホテルを辞めてるんですよね。辞めた理由は本当に不況によるリストラでしょうか? 何か問題を起こしてクビになったとかはないんですか?」
「え?」
「ホテルマンがSNSに客の情報を書き込むって事件、ありましたよね。」
「ああ・・・。分かりました。彼については私の方でもう少し情報を集めてみます。」
今度は信介が村雨に宣言した。
「佐崎さんのおっしゃる主犯はマンション建設に絡んで恨みを持つもので、だから身近にいるはずと言う推理は正しいと私は思います。しばらく静かなようですが、静かなままだとマスコミも顧みなくなってしまいます。また、何かやるんじゃないかと思いますよ。」
最後に村雨の言ったことは信介を非常に不安にさせた。ハッカーがまた何か仕掛けてくる。単にHPを書き換えるだけではなく、バスハッキングのような危険な事件が起こらなければいいが・・・信介は心の底からそう思った。
だが、事件は起こった。今度は信介のごく近くで。
村雨と電話で話した翌日のことだった。信介が駅前にある書店を見ていると、スマホが鳴り出した。画面に表示された発信者は妹の久恵だ。嫌な予感がした。信介が急いで電話に出ると・・・。
「お兄さん、助けて。殺される!」
久恵の悲痛な叫び声が響いてきた。
「ど、どうした?」
信介はスマホに怒鳴りかけた。
「助けて。」
きゃあ!という叫び声と共に音声が途切れた。だが、通話は切れていない。電話の向こうでは何かがガチャンガチャンと壊れるような音が響いている。そして久恵の悲鳴も。
「おい! 久恵どうした? 何があった?」
信介は返事のない久恵からの電話を持ったまま書店の中を走り出した。外に出ると、マンションへ向かう。
「おい、久恵! どうしたんだ?」
やはり応答がない。信介は町中を猛然と走り、マンションへ急いだ。スマホを耳に当てるとドシャンガシャンと大きな物音が続いていた。
何かが倒れた? もう久恵の悲鳴は聞こえなかった。が、次にはっきりと聞こえてきたのは・・・。
「この部屋は私の支配下にあります。」
信介は我が耳を疑った。そんなバカな・・・。だが、この声は、やはり間違いなかった。昨夜信介自身が設定したホッパーの音声だったから。そう、中性・機械音・速度4の音声だ。
信介はスマホを握りしめて力一杯走った。だが、寄る年波か徐々に息は上がり、足も動かなくなっていく。焦る気持ちとは裏腹に信介はスマホを手に歩き出していた。
ゼーゼーと荒い息をしながらようやくタワーシティの1階非常口に到着した。正面入口よりこっちの方が近い。だが、開くはずの自動ドアが開かない。信介は住民に貸与されているカードキーを財布から取り出すと、カードリーダーにかざした。
「おい、どうした!」
カードキーは無反応だ。重いガラス戸はうんともすんとも言わなかった。
「どうなってるんだ!」
信介はもう一度カードリーダーにカードを今度はバチンと押し当ててみた。やっぱりドアは開かない。
「くそう!」
その時ガラス扉の向こう側に数人の人影が現れた。その中には六郎の姿も。
「あ、博多さん!」
信介が乱暴に扉を叩く。博多六郎も信介に気が付いてドアの前に来た。が、ドアは内側からも開かないらしい。
「佐崎さん、た、大変です!」
だが厚いガラス扉に阻まれて六郎の声はかろうじてしか聞き取れない。
「反乱です。大変です。・・・。」
「え? いったいどうしたんですか?」
信介は今前を通ってきた地下駐車場の入口が開いていたことを思い出した。
「駐車場だ!」
そう叫んで信介は下を指さした。そしてその場を離れるとまた走り出した。地下駐車場へ緩いスロープを駆け下りる。すでにシャッターが降り始めていた。
「くそう!」
信介は老体にむち打ってスピードを上げると、間一髪シャッターを潜った。そのまま転がって止まる。したたか腰を打ってしまった。
「痛!」
だが、電話の向こうの久恵の事を思うと構ってなどいられなかった。信介は立ち上がると駐車場の中を走り出した。駐車場管理ブースの後ろにエレベーターがある。信介は乱暴にエレベーターのボタンを押した。
その時だ、駐車場管理ブースの扉が開くと一体のホッパーが出てきた。
「侵入者、侵入者。警戒レベルを上げます。警戒レベルを上げます。」
ホッパーは胸のディスプレイに言葉を表示すると同時に音声を発した。信介はエレベーターの前を離れると非常階段の扉を開けて中へ飛び込んだ。
ホッパーの足では階段は上れまい。あれと喧嘩するのは正直嫌だった。マニュアルを読んだばかりなので、ホッパーの仕様は頭に入っていた。身長は160センチ、重量は80キロほどある。上げた腕に乗せられる荷物の耐荷重も80キロである。ホッパーは絶妙な重心移動によって自重と同じ重量のものを持っていられるのだ。あの腕に殴られてはかなわない。
「それにしてもどうなってるんだ?」
1階を無視して2階に上がった信介はまたしてもゼーゼーと苦しい息をしながらコンシェルジュデスクを目指した。高層階への直通エレベーターはその隣だ。
「あ、佐崎さん!」
三橋夫人が信介を見つけて声を上げた。2階の玄関ホールには10人ほどの人が集まっていた。
「ねえ、なんで開かないの?」
そう叫ぶ声が聞こえる。どうやら正面玄関の扉もロックされてしまっているようだ。三橋夫人が隣に来た。
「三橋さん、いったい何があったんですか? コンシェルジュは?」
「分からないのよ。あ、でも分かっているのは館内のホッパーが狂っちゃったってこと。」
「ホッパーが狂った? ど、どういうことなんですか?」
「分かんないのよう。掃除してるホッパーたちが私たち住人を追い立てるのよ。もう、怖くて。」
三橋夫人は青ざめた顔で信介に泣きついた。
信介はそれを無視して直通エレベーターのボタンを押す。
「動いてないのよ、エレベーター。さっき止まっちゃったの。ドアは開かないし、どうしたらいいの?」
「妹が、妹が、部屋に居るんです。」
切実な表情で信介が言った。それで三橋夫人はコンシェルジュデスクの奥、例の貨物エレベーターの方を指さした。
「あそこならまだ動くかも。」
信介はそれを聞くと脱兎のごとく走り出しコンシェルジュデスクを飛び越えた。その刹那2階正面玄関ホールの外から中にカメラを向ける人物が信介の目の端に写った。
「ピカキンチュー。あいつ何を・・・。」
三橋夫人の言う通り貨物エレベーターは生きていた。扉が開くのももどかしく信介はエレベーターに乗り込む。今はi-tuberどころじゃない。信介は40階のボタンを押した。大きな音をさせてエレベーターはドアが閉まると、ガクンと一回振動してから上昇を始めた。
貨物エレベーターは一般のエレベーター、特に信介が普段よく使う高層階直通エレベーターと比べると酷く速度が遅い。信介はイライラしながら階数表示を見上げていた。スマホはさっきから繋がらない。いったい何があったのか。
「あのポンコツロボットめ・・・。」
そう呟いた時、突然12階ボタンが点灯した。
10・・・11・・・制動が掛かる。そして12階でエレベーターは停止した。ガクンとエレベーターの籠が揺れると、ゆっくりと扉が開いた。そこには・・・。
「なんだ、小僧か。」
「ご挨拶だね。」
信介は乗り込んできた肇を横目に何度も閉じるボタンを押した。
「焦ってるね。」
肇が信介を見上げる。
「黙ってろ。」
険悪な表情で言い放つと信介はまた回数表示を見上げた。
「らしくないなあ。何かあったの?」
「うるさい。」
「ちょっと落ち着こうよ。何をするにしても冷静さを失ってはうまくいかないですよ。」
信介が肇を睨んだ。
そんな信介に肇が言った。
「また、ハッカーたちの攻撃だよ。今度はホッパーが乗っ取られた。」
「なに?」
信介の顔色が険悪から驚愕に変化した。
「マンション中のホッパーが凶暴になってるよ。デジタルバンクもさ、ロボット作るならロボット3原則くらい組み込んどいて欲しいよな。父親の勤めてる会社だけどね。」
「小僧、どういうことだ。何を知ってる?」
「だから、ホッパーが乗っ取られてるって。」
「個人宅のもなのか?」
「どうかな? でもホッパーなら仕組みはいっしょだからそうかも。どうしたんだい?」
肇が相変わらずのため口で答えた。
「妹が部屋でホッパーに襲われてるのかもしれない。」
信介が苦々しげに答えた。
「おじさん、ホッパー持ってたの?」
「うん、まあ。一昨日貰ったばかりだ。」
「貰った? 誰から?」
「タナカ電機だよ。キャンペーンに当選して、送ってきたんだ。だから昨日充電と設定をして今朝から使い出した。」
「タナカ電機でホッパーが景品のキャンペーンなんて聞いたことないなあ。」
「何だって?」
信介の心の中に疑惑の雲が広がった、一気に。
「第一、おじさん応募したの?」
「いや、覚えてなくて。送り主がタナカ電機だったから・・・。」
「たぶんまたルーターだと思う。マンションのホッパーは全部ルーターと通信して仕事してるから。もしマンションWi-Fiを使ってるなら、おじさんのホッパーも乗っ取られてるよ、きっと。」
「部屋に妹の久恵がいるんだ。さっきSOSの電話が来た。その後悲鳴が聞こえて電話に出なくなった。」
信介が小学生の肇に絞り出すように言った。
そのタイミングで突然エレベーターが止まった。35階だ。と同時に階数ボタンも照明も消え、エレベーターは機能を停止した。
「ここも切られたか・・・。」
と肇。
「どうなってる?」
「ホッパーは自分でエレベーターに乗って階数移動もするだろ? エレベーターと通信してるんだよ。で、エレベーターを停止させた。IoTじゃない? モノとモノが通信するあれだよ。ホッパーをただのモノとするのにはちょっと違和感があるけど。」
「いや、あんなものはただのモノだ。人に似た形をしてるってだけさ。」
「いいから出ようよ。」
肇は止まったエレベーターの扉に指を掛けると力を入れた。
「なにやってんの、協力してよ。妹さんのとこ行かなくちゃ。」
肇に言われ、信介も扉に指を掛けた。
「エレベーターに停止命令を送っても階と階の途中では止まらないんだよ。必ず最寄りの階に停止するようになってる。これは機械的な装置が働いているそうだよ。だからエレベーターの中に閉じ込めることは出来ないんだ。」
「小僧は、何でも知ってるな。」
「地震とかああいう時の為でしょ。正確なところは知らないけどね、マンションのマニュアルに書いてあったような気がする。」
「マンションにもマニュアルがあったのか?」
ふたり力を入れて引くと閉じたエレベーターの扉に隙間が生じた。
「あるよ。配られたタブレットに入ってる。1200ページあったけどね。」
「小僧、それみんな読んだのか?」
「読み上げさせて聞いた。3日間で。親が偶然にも2人して出張でさ。暇だったんだ。」
今度は出来た隙間に指を入れ、一気にドアをこじ開けた。
「よし。行くよ。」
肇が言うと信介も身構えた。
「階段はホッパーは苦手だからね。でも、非常階段は少し先へ行ったところのドアだ。ホッパーがいなきゃいいんだけど、基本1フロアに1体いるんだよね・・・。」
肇はそっと開いたドアから辺りの様子をうかがった。
「しっ、あそこにいる。」
「住人たちはどうしてるんだ? 何人かは2階のロビーにいたが・・・。あと1階にも数人いた。」
「ああ、大抵の人は部屋にいると思う。ホッパーが電子キーをロックしちまったんだ。閉じ込められてるわけ。」
「なんだって?」
「おじさん、何だってが多いよ。一流のシステム営業だったんでしょ? なんとかホッパーを機能停止にする方法考えてよ。」
肇にそう言われても何も思い浮かばない自分が歯がゆかった。だが、今は妹の身が案じられるばかりだ。
「行こう。非常階段の入口とは反対側にいる、僕らのが速いよ。階段へ行けばこっちのものだから。」
ふたりは一、二の三でエレベーターを飛び出した。そしてダッシュだ。だが、信介が足を滑らせた。派手に転ぶとついホッパーの方を見てしまった。35階の管理ホッパーはまさにくるりと方向を変え、まともに信介と目が合った。
「ここは通行できません。」
ホッパーはそう言葉を発すると、ふたりに向けて廊下を滑ってきた。いつも温厚なホッパーは胸に付けたディスプレイが赤く明滅し、カメラの目は黒くブラックホールのようだ。そして手には金属バットが握られていた。
ホッパーの手は5本指ではない。3本の指で親指、人差し指、そして中指・薬指・小指の機能を代用していた。金属バットはその手にすっぽりと収まり3本の指でしっかりとグリップしていたのである。
「やばい!」
「おい、小僧。奴は武器を持ってるぞ。」
「おじさん、急ぐよ!」
信介は立ち上がると肇に続いて廊下を走った。すぐに非常階段の扉の前だ。ドアを開けると中に飛び込んだ。そして階段を駈け上る。後を追ってきたホッパーはドアノブをスムーズに掴むと、少し後ろに下がることでドアを開けた。階段をカメラで追う。肇と信介はすでに階段を折り返し、36階に迫っていた。
「大丈夫なのか?」
「ホッパーの足はキャタピラだよ。階段は上れないでしょ。」
「でも、キャタピラだから、重心を移動させれば上がれるのでは?」
「おじさん、しっかりしてよ。ホッパーに足首も膝もないから!」
肇に叱責されて信介は顔を赤らめていた。どうも自制心を失っている。信介はゆっくりと呼吸を整えると肇の後に従った。
39階。信介の部屋はこの上である。はやる心を静めて信介はゆっくりと肇に続いた。すると肇は39階の非常ドアのドアノブに手を掛け、そっと開いた。
「おい、小僧。俺の部屋は40階だぞ。」
「おじさん、ホッパーに顔見られたでしょ。顔認証に掛けられてすでに身元はばれてるよ。どこに住んでいるかもね。」
「なに!?」
「待ち伏せしてると思わない?」
「うぬぬぬ・・・。」
信介は唸ってしまった。あり得る。ホッパーはマンションの住人全ての顔を覚えている。失敗した。あんな時に滑って転ばなければ・・・。
「別の階段を使おう。この上は危ない気がするよ。」
ふたりはそろそろとドアを開けると廊下に出た。39階は静まり返っていた。
信介と肇はそろそろと廊下を歩いた。なるべく音をさせないように、ゆっくりと。だが、ホッパーに音のセンサーが付いていたかどうかは不明だ。音声認識は当然出来る。だが、侵入者など人の歩く音を検知できたかどうかは信介には分からなかった。
「いないな。」
あまりの静けさに信介が呟いた。
「おかしいね。」
肇も答える。
「どこかの部屋に入り込んでるんじゃ・・・。」
「どうして?」
「いや。だから、住人に危害を加えるとか・・・。」
「それはないと思うけど。」
肇は意外に冷静だ。だが、廊下を曲がり非常階段とは反対の角へ来ると急に狼狽えだした。
「どうした? 小僧。」
信介が質す。
「あ、あの、階段がないんだけど・・・。」
肇は扉の並ぶ廊下を眺めながら、来た廊下を戻ろうとした。
「小僧。どこへ行くんだ?」
「いや、こっちじゃなかったかも。」
肇はさも自信なさげに言った。
「階段はさっきのだけのはずだ。」
信介が答えると、さすがの肇も言葉に詰まってしまった。
「そうだよ。高層階は非常階段はひとつしかないんだ。低層階はいちいちエレベーターを待ちたくない人のことも考慮して階段が2つ付いている。」
肇は12階が住まいだ。高層階に行くことは滅多にない。自分の生活圏とは違う構造だったのだ。
「おじさん、ごめんなさい。知らなかったよ。」
肇はすっかりしょぼくれて信介に頭を下げた。
「ということはさっきの階段を行くしかないって事だな。」
「でも、上にはたぶんホッパーが。」
「それでも行くしかない。妹が危ないんだ。」
信介は時計を見た。久恵の悲鳴を聞いてからすでに20分を過ぎている。急がなくてはならない、危険であってもだ。
「小僧、お前はここへ残れ。いや、お前の足なら階段で下まで降りられるだろう。」
「そりゃごめんだよ。39階から階段を降りるなんて。それに1階へ降りたって、そこが安全かどうかは分からないし。」
「しかし・・・。」
信介が肇の顔を見下ろした。
「今回は住民格差のせいで失敗したけど、次はうまくやる。低層階と、高層階で作りが違うとはね。さすがはタワマンだよ。上に住まなきゃ意味ないってか。」
肇は軽口を叩けるほどに精神的に回復していた。相棒を連れて行くしかあるまい、信介は思った。
「よし、行こう。」
ふたりは廊下を非常階段へ戻り出した。今度は抜き足差し足はやめだ。さっさと行かなければ。
「ちょっと待って。」
急に肇が信介を呼び止めた。
「どうした、小僧。」
信介は気が急いて、歩きながら返事をした。
「ちょっと待ってよ。これ。」
ここはちょうどエレベーターホールで、4機あるエレベーターの1つの階数表示が点灯していたのだ。
「このエレベーター生きてる。」
肇が指し示したのは、高層階用のエレベーターだ。これは30階と最上階の間を往復している。そのエレベーターの扉の上、階数表示40が点灯していたのだ。
「どういうことだ? さっきは全部止まってたぞ。このエレベーターだけだな。」
が、信介が言い終わる前に肇はエレベーターの△ボタンを押していた。
「お、おい。小僧、大丈夫なのか?」
すぐにエレベーターの作動音がして降下中の矢印が点灯した。
「たぶんだけど、このフロアのホッパーが40階へ応援に行ったんだと思う。」
「なんだと?」
「さっきの35階のホッパーから連絡が行って、ひとつ下のホッパーが40階へ行った。奴等階段は使えないからね。それでエレベーターのひとつを動かしたんだ。」
「じゃ、じゃあ、40階には2体のホッパーがいて、部屋にはもう1体ホッパーが?」
信介は青ざめた。その間にエレベーターは39階に到着した。扉が開く。身構える信介と肇。だが、エレベーターは空だった。
「よし、行こう。」
肇が躊躇なく乗り込んだ。信介もそれに従う。40階のボタンを押すと扉を閉めた。
「僕の予想が正しければ、ホッパー2体は非常階段の前で待ち伏せしているはずだよ。だって、さっきのホッパーはそう報告しているはずだから。おじさんの部屋はエレベーターを降りてどっち側? 非常階段の方でなければ、奴らが来る前に部屋に直行できる。」
「ああ、非常階段とは反対側だ。ラッキーだな。だが、小僧。2体いるんだ、1体は階段。もう1体はエレベーター前で待機していたらどうする?」
「ホッパー君はそんなに賢くないと祈ろうよ。」
「ははは!」
信介は思わず笑い出した。
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