粘度の高い空気が纏わりつくぼくの躰に
甘露寺なでこ
敗北的恍惚
これはプールの授業の後の話。
粘度の高い夏の空気が躰じゅう纏わりつき、冷えた汗に入り混じる。
ぼくは太陽が温めたやわらかいタオルで火照った躰を拭う。教室に戻ると国語の授業が始まっていた。開いた窓をしめると踊っていたカーテンは平穏を取り戻し、刹那、つめたいクーラーの風がぼくの躰を包囲した。重ったるい倦怠感と襲う眠気に快感さえも感じてしまう。そして心地よく耳に入る教師の声は、ぼくを眠りの深淵へと引きずり込んでゆく。ああ、なんとも名状しがたいこの背徳感なんだ。ぼくはあの恍惚に達した国語の時間が好きだった。
粘度の高い空気が纏わりつくぼくの躰に 甘露寺なでこ @kanrojinadeko
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